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【日本初の『胃弱外来』開設」後編:巣鴨駅前胃腸内科クリニック・神谷雄介院長】

胃の不快感の多くは実は「機能性ディスペプシア」という病気

原因不明の胃の不快感には病名がある

 2019年1月、巣鴨駅前胃腸内科クリニックに日本初の「胃弱外来」が開設された。この巣鴨駅から2分という至極便利な立地にあるクリニックで日々、診療にあたっているのが神谷雄介院長だ。

「胃弱」は医学的な病名ではなく、あまり馴染みのない『機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia』という疾患や胃液や胃の中のものが食道に逆流する『胃食道逆流炎症』(Gastro Esophageal Reflux Disease:以下GERD)などをさす。

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2013年に診断名として登場した機能性ディスペプシア

 機能性ディスペプシア(以下FD)が、正式な診断名として認められたのは2013年。まだまだ聞きなれないと感じる人も多いだろう。胃の粘膜に目に見える異常がない。つまり器質的な変化がないのに、胃の働き(機能)に問題があるのが特徴だ。
 
 ディスペプシアとはギリシア語の、dys=悪い+peptein=消化、に由来する。従来、神経性胃炎やストレス性胃炎、胃下垂などと呼ばれていたものだと思えばいい。

 日本消化器病学会によると、日本では、健康診断受診者の11~17%がFDであり、胃の不調を覚えて受診する人の45~53%がFDだと考えられている。いわゆる「胃弱」であり、器質的な病気ではないので軽くとらえがちだが、神谷院長はこう指摘する。

「他の医療機関で、内視鏡検査の結果『異常がない』と診断を受けながらも、痛みがあることに悩んでいる患者さんが、当院には多く来られます。このような方は、症状を放っておくと、集中力がなくなり仕事にも支障をきたし、その結果、生活の質(QOL:Quality of Life)が下がる恐れがあります」

 日本では昔から「胃弱」に悩む人が多く、文豪夏目漱石の『吾輩は猫である』(1905年/明治38年)の登場人物、苦沙味先生は「胃弱」で、食後に消化剤タカジアスターゼを飲んでいる。漱石自身も「胃弱」に悩まされ、胃潰瘍をわずらい49歳で亡くなった(1916年/大正5年)。

 昭和に入り1960年代には、胃透視や初期の胃カメラが登場し、胃がんや胃十二指腸潰瘍が正確に診断できるようになり、1970年代には本格的な胃酸分泌抑制剤の開発によって潰瘍は治癒するようになった。

 そして1980年代には、胃がん、胃十二指腸潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌が発見される。さらに除菌が一般的になり、胃がん、胃十二指腸潰瘍の発症は阻止されるようになったのだ。このような経緯で、胃がん・胃十二指腸潰瘍の患者は減っているが、機能性ディスペプシアと逆流性食道炎(Gastro Esophageal Reflux Disease:以下GERD)、つまり「胃弱」は増えてきている。

「FDの症状は大きく2つに分けられます。ひとつは、食後の胃のもたれ感、早期満腹などの食後愁訴症候群(PDS:postprandial distress syndrome)。もうひとつは、みぞおちの痛み、みぞおちの焼ける感じなどの心窩部痛症候群(EPS:epigastric pain syndrome)です。どちらのタイプも、根本の原因のひとつはストレスであり、ストレスによって自律神経のバランスが崩れることで症状が引き起こされます」(神谷院長)

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