日大アメフト問題は日大経営者の責任を問うためにも刑事司法の役割は大きい(写真はイメージです)(depositphotos.com)
日大と関西学院大のアメリカンフットボールの定期戦で悪質タックルがあり、大きな議論になっています。当該選手は、監督・コーチの指示で意図的に反則タックルを行ったこと、自分にアメリカンフットボールをする資格がないこと、アメリカンフットボールをやめることを記者会見で明らかにして謝罪しました。
アメリカンフットボールは死亡事故が生じうる競技であり、ルールを遵守しなければ、ひどく危険です。仮に、監督の指示があったとしても、実行するかしないかは本人の判断です。自立した判断能力を持った個人でなければ、こうした危険なスポーツに参加してはなりません。
[an error occurred while processing this directive]日大監督は「負えない責任」を引き受け、「負うべき責任」を回避
ナチスの残虐行為、ベルリンの壁での逃亡者の射殺など、いずれも実行者が処罰されました。事件解決のために最初に行うべきは、当該選手に対する刑事責任の検討です。この選手の将来のためにも、刑事責任についてはっきりさせるべきです。
とはいえ、最大の問題は、監督・コーチにあります。監督・コーチは、理由を示さずに当該選手を目の敵にして攻撃し、追い込まれた選手に命じて、相手のクオーターバックに傷を負わせようとしたと報道されています。本当だとすれば卑劣極まりない行為です。
日大の監督・コーチは、負傷させろと命じたことを否定し、監督・コーチの意図と当該選手の受け止め方に乖離があったことが事件の原因だとしました。監督は「すべて自分に責任がある」と発言しましたが、選手が悪質タックルを実行したことの責任を代わって負うことはできません。しかも、指示したことを否定し、責任を選手に押し付けました。負えない責任を引き受けるとする一方で、負うべき責任を回避しようとしました。立派な態度だとは言えません。
「犯罪か、犯罪じゃないのか」の境界を示すべき
監督・コーチの発言の矛盾が次々と指摘されていますが、監督・コーチの主張を、民間人が覆すのは不可能です。調査権限がないことに加えて、法的な評価を下す立場にないからです。
傷害罪は、刑法の中でも基本的な犯罪です。その適用範囲によって、多くの人の行動に影響を与えます。刑事司法は今回の事件を捜査し、「犯罪か、犯罪じゃないのか」、境界を示すべきです。
スポーツのルールで選手を守れるのか、スポーツの範囲外の犯罪行為として刑法で選手を守るのかが問われています。このまま刑事司法が捜査することなく事件を放置すれば、日大の監督・コーチの行動を承認したことになりかねません。いかに厳しいルールがあっても、スポーツのルールでは、意図的な反則タックルの歯止めになりません。被害者側も、警察に被害届を提出し、検察への告訴も検討しているとのことです。