eNeura社が製造・販売する頭蓋磁気刺激(sTMS)装置「SpringTMS」(画像は同社のYouTubeより)
米メイヨークリニック神経学のAmaal Starling氏らの研究チームは、患者が自宅で使用できる携帯型の単一パルス経頭蓋磁気刺激(sTMS)装置「SpringTMS」が片頭痛の予防に有効であるとする研究結果を『Cephalalgia』3月4日オンライン版に発表した。
発表によれば、研究チームは2014年12月~2017年3月の期間に頭痛専門クリニックに登録した、18~65歳の片頭痛患者263人を対象として行われた。
[an error occurred while processing this directive]まず患者は指導を受けた後、自宅で3カ月間「SpringTMS」を使用しながら頭痛日誌を付けた。患者は午前中と夜間に4回ずつ「SpringTMS」を使用し、1分未満の磁気刺激を与え、頭痛発作中に磁気刺激を3回与える治療を15分の間隔を空けて最大で3回行った。
その結果、研究開始から3カ月後、片頭痛のタイプにかかわらず、頭痛発作が見られた日数が1カ月当たり平均で約3日減少し、頭痛の頻度が半減した人は46%に上った。
磁気エネルギーを用いて脳の興奮を抑制
今回の論文が発表された「ESPOUSE Study」の成果は、「SpringTMS」を製造・販売するeNeura社の資金提供を受けて実施された。
「SpringTMS」は、2014年5月に米国で初めて片頭痛の治療を目的としたTMS装置として米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。以来「SpringTMS」は、神経疾患や精神疾患の治療や診断で広く使用され、2017年9月に片頭痛の予防にも適応されている。8cm×23cmのコンパクトサイズ、1.4kgの軽量。患者の使いやすさを配慮したデザインが特徴だ。
「SpringTMS」は、磁気エネルギーを用いて神経細胞の電気的環境を変化させ、脳の興奮を抑制する仕組み。したがって、患者が発作した時は、装置を後頭部に当て、ボタンを押すだけで磁気パルスが発生する。つまり、過剰に興奮した片頭痛患者の脳の興奮を抑えるので、頭痛発作を予防できる。
Starling氏は「『SpringTMS』を使用すれば、片頭痛患者の頭痛発作の頻度だけでなく、片頭痛治療薬の使用量も減量でき、忍容性も良好だ」と説明する。
米国の片頭痛患者は3800万人。男性よりも女性の方が多く、女性の有病率は男性の3倍。根治療法はなく、抗てんかん薬、抗うつ薬、降圧薬のほか、ボツリヌス毒素注射、ストレスマネジメント、リラクゼーション法、適度の運動などが症状を軽減する。
Starling氏の共同研究者の一人で米アルバートアインシュタイン医科大学神経学のRichard Lipton氏は「片頭痛に苦しむ患者に新たな治療の選択肢を提供したい。薬物治療を受けたくない患者や、薬物治療が奏効しないか副作用が問題になる患者の重要な選択肢になるだろう」と主張している。