痴漢被害者の9割近くが泣き寝入り(depositphotos.com)
多くの女性が被害にあっている痴漢犯罪。加害者となる男性は、いったいなぜそのような行為に及んでいるのか?
1000件を超える性犯罪者の臨床データの蓄積をもとに、その真相にせまった痴漢の実態を明らかにした専門書『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)が、先日発売された。著者は大森榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳氏(精神保健福祉士・社会福祉士)である。
[an error occurred while processing this directive]斉藤氏は同クリニックでさまざまな依存症の患者の治療にあたっている。性犯罪を繰り返す人も、その治療対象のひとつだ。そんな斉藤氏による同書は、個人の問題に矮小化してしまいがちな痴漢事件に関して社会モデルと医療モデルの視点で捉えなおした日本初の痴漢の専門書である。
斉藤氏に<痴漢犯罪>のさまざまな疑問を訊いた。
初めての痴漢で「脳に電撃が走る」
「痴漢を繰り返してきた人に初めて痴漢をしたきっかけを聞くと、『いつも想像してた痴漢を今日こそやってみよう』と意を決して行ったという人は意外に少ない。一番多いのは、たまたま満員電車の中で女性に手や身体の一部が触れたときに、柔らかくて気持ちよかったという人たちが多い」
「その経験を『脳に電撃が走った』と表現する人もいます。ほかには、偶然女性が痴漢されているのを目撃して、『自分もやってみようと思った』という人も一定数存在します。また、少数派ですが痴漢のアダルトコンテンツを模倣したケースもあります」(斉藤氏)
ふとしたきっかけから始まる痴漢犯罪。『男が痴漢になる理由』によると、平成28年度中、東京都内で痴漢(迷惑防止条例違反)は約1800件発生したというデータがある(警視庁調べ)。
だが、斉藤氏によれば、このように表に現れた痴漢行為は氷山の一角にすぎないという。これも同書に掲載されている警視庁のデータによれば、東京・名古屋・大阪に居住し、通勤・通学のために電車を利用している16歳以上の女性2221人のうち、「過去1年間に電車内で痴漢被害に遭った」と回答した女子は304人、全体の13.7%にのぼった。
そのうち「警察に通報・相談していない」と回答した女性は271人。被害女性の9割近くが泣き寝入りをしていることになる。