水難事故には何はともあれ胸骨圧迫(depositphotos.com)
梅雨が明ければ夏本番。多くの人たちがプールや海水浴、川遊びなど、水辺のレジャーを楽しむ季節がやってくる。
半面、水難事故が一気に増えるのもこの時期だ。7月と8月に発生する水難事故の数は年間の40%以上を占める。
[an error occurred while processing this directive]年間700人強〜900人弱が死者・行方不明
「政府広報オンライン」によれば、2015年に全国で発生した水難は1450件、水難に遭った人の数は1635人。そのうちおよそ半数に当たる791人が亡くなったり行方不明になったりしている。
過去10年間を振り返ってみても、水難者の数は1500人弱から1900人強の間で推移し、そのうち死者・行方不明者は毎年700人強〜900人弱。いったん事故が起きると、命にかかわる可能性が非常に高いのが水難事故の特徴だ。
事故が起きてしまった場合に遭難者の生死を分けるのが、そのとき現場に居合わせた人、つまり「バイスタンダー(発見者、同伴者等)」の救命スキルだ。
幸い救助に成功して一命を取り留めたとしても、完全に心臓が停止し、脳に酸素が送られない状態が3〜4分以上続けば、重い後遺症が残る恐れがある。
すぐに「胸骨圧迫」すれば後遺症なく退院が3倍に
溺れた人に対するバイスタンダーの「CPR(心肺蘇生法)」は、その後の機能回復にどのくらい影響するのか――。その研究テーマに取り組んだのは、米南カリフォルニア大学(USC)ケック医学部のJoshua Tobin氏らのグループだ。
アメリカでは1日に10人が溺死しているという。今回の研究では、溺れて心停止が見られた908人を対象とし、その時の処置と神経学的な予後の関係について検討した。
「心停止に至った人に対して、まず命が助かってほしいと願うことは確かだ。しかし、たとえ生存できたとしても植物状態になってしまったら、良かったと考える人はほとんどいないだろう」とTobin氏。そこで今回は、神経学的予後の良し悪しに基づいて結果を分類することにしたという。
その結果、ただちにバイスタンダーから胸骨圧迫を受けた溺水者は、脳機能が良好な状態で、後遺症もなく退院できる可能性が3倍にもなることが判明した。