トランプ政権の誕生で「オバマケア」の運命は?(JStone / Shutterstock, Inc.)
アメリカでは21世紀に入っても国民の15%以上(約5000万人)が医療保険を持っていなかった。無保険者問題と同時に深刻なのが、毎年伸び続ける医療費だった。2009年の医療費は約2.5兆ドルで対名目国内総生産比17.6%に至っており、世界で最も多くの医療費を使っている。
2009年医療費のGDP比率
この状況に対処するために、2010年3月にすべての国民が医療保険に加入することを促進する「患者保護および医療費負担適正化法(Affordable Care Act)」が成立し、2014年1月から実際に運用され始めた。
アメリカには日本のように国民全員が公的な健康保険制度に加入義務がある「国民皆保険制度」はなく、民間医療保険、特に雇用主が被用者やその扶養家族、退職者に提供する「雇用主提供医療保険」が主流である。
[an error occurred while processing this directive]オバマケアで月平均272ドルの補助金が支給
「患者保護と妥当な医療に関する法律」の主な内容な以下である。
①国民に保険加入を義務付ける
②保険会社は既往症など健康状態を理由に保険加入拒否できない
③従業員50名以上の企業は従業員の保険を購入する義務が生じる
④違反した国民や企業には罰金が課される
⑤一定所得以下の人が保険を購入する際には政府が補助金を提供する
議会予算局の推計によれば、無保険者は2019年度の時点で、今回の改革を行わなければ5400万人に増え、改革を行えば2300 万人に削減されるということだ。
その中でも特に重要な項目は、「①国民に保険加入を義務付ける」ことと、「⑤一定所得以下の人が保険を購入する際には政府が補助金を提供する」ことだった。
どちらも憲法違反だとして連邦政府が訴えられたが、2012年6月に連邦最高裁判所は国民に保険加入を義務付け、違反者に罰金を科すことを合憲という判断を下した。また、国民に対する補助金の支給に関しても、2015年6月、連邦最高裁判所は合憲との判断を示した。その結果、現在、月平均272ドルの補助金が支給されているという。