大麻の医療的可能性について20年遅れる日本(shutterstock.com)
最近、大麻に関して残念な事件が続きました。まず、岡山と鳥取で「産業用大麻の栽培振興」を目指す立場にある人が、続いて「医療大麻解禁」を掲げた参院選の立候補者が、大麻を不正に所持していたとして逮捕されました。
「産業用大麻の栽培振興」とは、毒性が無く濫用には結びつかない品種の大麻を繊維などを取る目的で栽培し、地域おこしなどに役立てようという動きのことです。
[an error occurred while processing this directive]「医療大麻解禁」とは、危険と言われている大麻を医薬品としてなら使えるようにし、治療法のない難病の患者さんなどを救っていこうという考え方のはずです。
どちらも心配されるのは濫用に結び付いてしまうこと。その推進者は、濫用防止に最大限の努力をしなければならない義務があるはず。今回は、全く逆の行いをしてしまったと考えられます。健全に「産業用大麻」や「医療大麻」を活用しようとする人々にとっては、本当に残念な事件が起こってしまいました。
ただ、大麻には「産業用大麻」という無害なものがあるということや、海外では病気を治す「薬」としても研究されているという事実が国民に伝わる貴重な機会にもなりました。
大麻は、戦前まで日本人にとって当たり前な作物でした。しかし戦後はタブーとされ、その害やかかわり方について考えることを封印してしまいました。従って、今では日本人の多くが、大麻について幼稚な判断しかできなくなっています。
大麻は、わが国の多くの伝統文化を支えていると共に、化石資源に代わる循環型の資源として大変有望な作物です。(参照:置き去りにされた作物としての視点 http://medg.jp/mt/?p=6856 ) また、医療面においても期待される植物です。(参照:最悪のドラッグラグ「医療大麻問題」 http://medg.jp/mt/?p=2081 )
悲しい事件でしたが、大麻についての知識を深め、大麻と日本人のかかわり方について知的に考える機会にしなければならないと考えます。
真摯な大麻栽培者まで犠牲にしてはならない
事件を受け、鳥取県の平井伸治知事は、毒性が低い産業用大麻も含め、大麻栽培を全面的に禁止する方針を明らかにしました。これは、やり過ぎと考えるのは私だけではないと思います。
なぜなら、知事には薬物濫用を防ぐ役割以外に、良き伝統を守るとか健全な産業を育成するなどの義務もあるからです。この地域では、もともと大麻を有用に使う伝統があり、それを復活発展させようという崇高な理想の下で大麻の栽培が始められたはずです。簡単にあきらめてほしくありません。むしろこれを教訓として、理想を実現してほしいと思います。
そして悪用されたのは、外から持ち込んだ大麻でした。現地で栽培された大麻は、県当局の管理のおかげで無害を保っていたとのこと。即ち、もし責任者が危険な人物だったとしても、安全な大麻栽培が維持できることが確認できたということです。イメージや感情だけで判断せず、現実を冷静に分析し、判断していただきたいと願っています。
また、報道の中で現在大麻栽培免許を持っているのは、全国で僅か33名だということが明らかにされました。残された32人の方々への風当たりが厳しくなったり、これをきっかけにやめてしまったりすることがないよう祈っています。