テレビの見過ぎでエコノミークラス症候群に(shutterstock.com)
今年4月に起きた熊本地震で避難生活を続ける人の間で発症が相次ぎ、再び注目されることになった「エコノミークラス症候群(脳動脈血栓塞栓症)」。
長い時間同じ姿勢を取り続けることで、脚の静脈にできた血の塊(血栓)が血流に乗って肺に達し、肺動脈に詰まってしまう病気だ。
[an error occurred while processing this directive]気づかぬうちにできた血栓は、立ち上がって動き始めた瞬間に静脈に流れ出し、心臓を通って肺の動脈をふさぐ。その結果、「突然」呼吸困難や激しい胸痛に襲われ、最悪の場合は死に至る。症状がでたときにはすでに深刻な状態になっているという怖い病気なのだ。
飛行機や車の座席など、狭い空間に座り続けると発症しやすいことは広く知られている。しかし最新の研究によれば、日常生活でも油断は禁物だという。
エコノミークラス症候群での死亡が2.5倍にも
自宅にいたとしても、テレビを視聴する時間が長すぎるとエコノミークラス症候群で死亡するリスクが高まるというレポートが、7月26日発行の米医学誌『Circulation』に掲載された。大阪大学大学院・医学系研究科社会医学講座教授の磯博康氏らの研究だ。
今回の研究では、40〜79歳の日本人8万6000人以上を対象に、テレビを見て過ごす時間ほか生活習慣の情報を収集。その後、19年間の追跡調査を行った。
この期間中に59人がエコノミークラス症候群で死亡。1日にテレビを見る時間が2.5時間未満の人と2.5〜4.9時間の人を比較すると、後者のほうがエコノミークラス症候群で死亡するリスクが1.7倍も高くなった。
また、テレビの視聴時間が2時間増えるごとに死亡リスクが40%も高くなるなり、1日あたり5時間以上テレビを見る人の死亡リスクは、視聴時間が2.5時間未満の人の2.5倍にもなった。
これまでにも、長時間テレビを見続けた後にエコノミークラス症候群を発症したケースはいくつか報告されているが、大きな集団の中でテレビの視聴時間とエコノミークラス症候群の関係が調べられたのは今回が初めて。
この研究では因果関係までは証明できないものの、エコノミークラス症候群は診断が難しいため、テレビの見過ぎによる死亡リスクは、実際にはさらに高い可能性もあるという。