怖いハンドルを握っての体調急変 BigGabig/PIXTA(ピクスタ)
時刻は午後0時35分を指していた。車道側の信号は赤だった。「鉄と血が混じった臭いがして……車が爆発するんじゃないかと思った」、現場に居合わせた男性はそう証言した。
阪急梅田駅西口のスクランブル交差点付近で急発進した黒のプリウスが歩道に乗り上げ、次々と10人をはねて、運転者自身と中年男性が死亡。女性1人が意識不明の重体、20代~70代の男女8人が重軽傷を負った。
[an error occurred while processing this directive]「人がバタバタ倒れてて、若い女の子が道路に飛ばされていて……」、タレントの堀ちえみさん(49)の証言だ。
「複数の人が倒れていたのでテロかなと思って」、MBSの番組に向かう途上での目撃だった。「事故と聴いたのは少し経ってからで」、画面の表情は怯えていた。
健康で積極的で行動派が突然のけ反って……
ハンドルを握っていたのは奈良市内でビル管理会社を経営していた大橋篤さん(51)。ラグビー経験者にして高校の元体育教師、先月も10キロマラソンを完走し、知人の多くが「健康的」「積極的」「行動派」と述懐する人物だ。
が、暴走車の車内を一瞥した人々の現場証言には「痙攣していた」「のけ反る感じだった」「後ろにもたれかかって」「ハンドルは持っていなかった」など、事故直前の大橋さんの姿勢や状態に異口同音の異常印象が多かった。
朝日新聞はいち早く、捜査関係者からの情報として「(大橋さんには)大動脈解離の症状がみられる」との救急隊の搬送時談話を紹介。それにしても謎が多い今回の暴走死傷事故、司法解剖による運転者の死因究明と被害に遭われた方々の一日も早い回復が待たれる。
運転中の発症事故は日本の未来を暗示している!?
脇見運転や居眠り運転、ブレーキとアクセルの踏み間違い、高齢者による逆走行為などヒューマンエラーによる自動車事故は依然後を絶たない。加えて近年増加の一途を辿っているのが“運転中の発症”と思しき交通事故だ。
不整脈、あるいは2時間強の運転で足の血行が悪化して起こるエコノミー症候群などが代表例だ。
しかし、こうした運転中の病気発症例を正確に把握できる公式統計が未だ存在しないのもわが国の現実。多くが“運転ミス”で処理されている。