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【連載「死の真実が“生”を処方する」第23回】

バス事故から考える職業ドライバーの健康〜タクシーでは約3割が体調不良でも乗務

軽井沢でのバス転落事故では計15人が死亡kong act / Shutterstock.com

 今年1月、とても痛ましい事故が発生しました。乗客と乗員、計15人が亡くなった、長野県軽井沢町のスキーツアーバス事故です。4年前に起きた関越自動車道ツアーバス居眠り運転事故を上回る犠牲者を出しました。

 事故の後、業者の安全軽視を裏付けるような経緯が表面化。事故を起こしたバス会社は運転手13人のうち10人が健康診断をしていなかったことなどで、事故直前に行政処分を受けていました。

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 今回もバス運行会社は出発前、運転手の健康状態を確認する点呼もしていません。時間外労働についての労使協定も結ばない違法な実態も判明。この会社が旅行会社から受注した運賃が、国の基準を大幅に下回っていたことも明らかになりました。

後を絶たない運転手の注意不足が原因の事故

 自動車を運転する際には、運転者が健康であることが第一条件です。昨今、大型トラックやツアーバスなどで、運転手の注意力の不足などが原因となる事故が後を絶ちません。業界の職場環境改善を含めた啓発が必要となっています。

 先日、あるトラック運転手が体調不良を訴えて相談に来ました。毎日早朝から深夜まで運転業務に従事し、休日が月に3日程度しかないそうです。その方は、全身のだるさ、腰痛、脂質異常症に悩まされています。もちろん、食事は不規則で、睡眠時間は1日に4時間半程度とのことです。

 このような現状が許されるはずがないので、職場の対応を尋ねたところ「裏勤務簿」を作成させられているとのことです。その方は、前の職場でリストラに遭い、現在の職場に中途採用されたそうです。仕事がなくなるのを恐れて、会社に不平を言うことができないのです。

 このような状況下では、ご本人の健康を害することはもちろんのこと、交通社会の安全性を揺るがす恐れがあります。

健康起因の交通事故は増加傾向にある

 以前にも紹介しましたが、自動車事故の約1割は運転者の体調変化が原因と考えられています。皆さんも、運転者のてんかん発作により、重大事故が生じたことをご存じだと思います。運転時間が長い事業用自動車を見ると事故数は全体的に減少傾向ですが、健康起因の事故は増加傾向にあります。

 事業用自動車の運転者は、運転時間が長いだけでなく、夜間の運転を含む緊張や疲労、姿勢の拘束、輸送の安全のための精神的負担による心身のストレス負荷が大きいので、さまざまな病気の発症リスクが高いと言われています。ですから、より、運転者の体調を含めた職場環境に配慮しなければなりません。

 国土交通省は平成26年6月に、事業用自動車に係る関係団体に対して、事業用自動車の運転者の体調急変に伴う事故を防止するための対策の徹底について通達を出しました。体調変化に起因する事故の多くは、さまざまな配慮で予防することができるからです。

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