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【シリーズ「子どもの心と体の不思議のサイエンス!」第13回】

赤ちゃんの“怒り”は自我の目覚めのサイン! 脳に柔軟性が育ってきた証拠でもある

赤ちゃんの自我の目覚めのサインとは?/shutterstock

 赤ちゃんの自我の芽生えは、生後6〜7カ月頃から始まる。動くのがままならなかった赤ちゃんも、首がすわり、腰がすわり、寝返りするようになると、おもちゃを取ろうとしたり、お母さんに手を伸ばしてみたりする。「あれをしたい」「これを触りたい」という欲求がムクムクと生まれてくるのだ。

 赤ちゃんが独りで遊んでいる時に、好きなおもちゃを急に取り上げられたり、邪魔されたりすると、大泣きしたり、むずがって抗議したりすることはないだろうか? つい最近までは、取り上げても、すぐに別のおもちゃを取り出して、機嫌よく遊んでいたのに、なぜだろう? お母さんは、そう思うかも知れない。

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 赤ちゃんは、7〜12カ月頃になると、自分なりに遊びのプランや見通しを立てて行動するようになってくる。邪魔されて怒るのは、「自分はこうしたい」という欲求や自我の感覚が生まれてきた何よりのサイン。赤ちゃんは、自分の予定や段取りの腰を折られて、抗議している。つまり、赤ちゃんは、遊び方や時間の過ごし方について、自分なりのイメージや感触を持てるだけの大きな成長ステップに入ったのだ。

 ただ、赤ちゃんは、お母さんの反応や周囲の状況を十分に分かっているわけではない。お母さんは「困った」「扱いにくくなった」と感じるかもしれないが、気にする必要はない。しばらくすると、周囲の反応を見ながら、自分の行動や態度を決めるように変化してくるからだ。お母さんは、赤ちゃんの視野の広がり方や、自我の芽生えのプロセスをしっかりと見守ってほしい。

やがてお母さんの反応を気にし始める!

 見方を変えれば、赤ちゃんのこの変化は、赤ちゃんの脳にさまざまな可能性を確かめたり、検討したりする柔軟な能力が育ってきた証拠でもある。

 10カ月頃になると、自分のしたいことと、お母さの思いが必ずしも同じではないことに、うすうす気づき始めるだろう。たとえば、「自分はこうしたいけれど、いいのかなあ?」「お母さんは、どうするのかなあ?」「お母さんは、こう出るかもしれないけど、自分はやはりこうしよう!」などと、赤ちゃんの頭の中は、アレコレと思案が駆け巡っている。

 「これをしてもいい?」「これは大丈夫? 叱らないでしょ?」などと、お母さんの顔色をうかがったり、自分の行動がお母さんにどんな反応を起こすかを確かめたりし始める。「それは、ダメでしょ!」と叱られると、お母さんをじっと見て、泣き出す仕末。赤ちゃんにしてみれば、「叱られると思ったけど、やっぱりか! でも、これで遊びたかったよ!」と、小さな胸の内で葛藤しているのだ。

 時には、お母さんから赤ちゃんに働きかけてみよう。まず、手のひら大の小さなおもちゃを赤ちゃんに見せる。赤ちゃんが取ろうと手を伸ばした時に、おもちゃを握って取れなくする。生後すぐの頃は、赤ちゃんは、おもちゃが見えなくなると興味をなくすが、6カ月頃なら、手をこじ開けてようとする。9カ月頃になれば、おもちゃを持った手ではなく、お母さんの顔を不思議そうに見返す。「どうしって、そんなことするの?」などと、お母さんの行動や態度の意味を少しずつ分かるようになる。

 赤ちゃんが泣いたり、むずがったり、怒ったり、「こうしたい」と抗議したりする行動のウラでは、赤ちゃんの自我の目覚め、欲求や感情の大きな成長が隠れているのだ。見守ってあげよう。
(文=編集部)

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