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【連載「死の真実が“生”を処方する」第8回】

死体にわく虫で死因を解明?犯罪捜査に用いられる「法医昆虫学」とは?

変死体に群がる虫から死後の経過時間がわかるshutterstock.com

 現在、日本の年間死亡者数は約120万人です。その多くは病院などで最期を迎えますが、事件や事故、さらには原因がわからず、野外で死亡することもあります。

 そして警察では、犯罪死体に対しては刑事訴訟法上の「検証」を、変死体や変死の疑いがある死体には刑事訴訟法上の「検視」を、非犯罪死体には死体取扱規則に基づいた「見分」を行っています。いずれにせよ、死体を細かく観察し、損傷箇所はどこか、損傷はなぜ生じたか、死後どの程度の時間を経ているかなどを調べます。

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 身元も死因もわからぬ変死体が発見され、もしそこに「虫」がたかっていたら......。犯罪捜査には、昆虫の習性が役に立ちます。ハエやウジ虫、甲虫類など、遺体に寄ってくる虫で死後の経過時間の見当がつくからです。つまり、「虫」が貴重な証拠となるのです。今回は昆虫と法医学、鑑識科学の関係について紹介しよう。

凶器の鎌にハエが!

 これは13世紀に中国の役人が記した書物に記載されていた話です――。

 ある村で殺人事件が起きました。被害者は鎌のようなもので何度も切りつけられていました。懸命な捜査にもかかわらず、目撃者や凶器も発見されませんでした。事件は迷宮入りかと思われた、そんなある日、村の裁判官が、すべての村人に、自分の鎌を持って集まるように命じました。すると、ある1つの鎌だけに、ハエがたかっていたのです。鎌をよく調べると、わずかな血痕と細かい組織片が見つかりました。鎌の持ち主は罪を自白し、事件は解決されたのです。

 このように、犯罪捜査に昆虫が証拠として利用されることは古くからあります。

大切なのは死後の経過時間を明らかにすること

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