最近の流行はサッカーギャンブル Havana/PIXTA(ピクスタ)
先頃、「小児期に衝動的な行動が見られる男の子は、大人になってから、抑うつ症状が出やすく、ギャンブルをする可能性も高い」という研究論文が発表された。
発表されたのは、アメリカの学術誌『ギャンブル研究ジャーナル』(5月21日号)。ケベック大学(カナダ・モントリオール)の研究者チームが、モントリオール在住の男児約1000名を、長年にわたって追跡調査したものだ。
[an error occurred while processing this directive]この研究者チームは、1984年以降、モントリオールの低収入地域に暮らす幼稚園児の男の子1162名についてデータを収集した。家族の情報をはじめ、両親や友人との関係性などについても情報を集め、衝動的な行動の頻度を分析した。
また、男の子が17歳、23歳、28歳になった時点で、このうちの888名に、ギャンブルの問題があるかどうか、それから、抑うつ症状の有無を確認している。
結果としては、17歳~28歳まで、慢性的にずっとギャンブルの問題を抱えていたのは、全体のおよそ3%であった。一般に、ギャンブルに傾倒するのは、成人男性の1~3%とされているので、一般統計と大きくは変わらないことになる。
ただし、子どものときに衝動的な行動が目立った男の子ほど、ギャンブルに手を染めやすい傾向が現れた。しかも、こうしたギャンブルの問題を抱える対象者のうち、73%、つまり4分の3近くに抑うつ症状が見られ、しかも、だんだん悪化していることがわかった。
研究者チームのリーダー、フレデリック・ダッソー氏は、「衝動的な行動をする若者は、ギャンブルの問題も、抑うつ状態に陥る可能性も高い」と結論づけている。
これは、若年期の男性について、ギャンブルと抑うつに関連性があることを明らかにした初めての研究であり、今後の進展に期待が寄せられている。
若者に大人気の「サッカーギャンブル」
近年、世界的に「ギャンブル依存症」の若年化傾向が、問題になっている。ギャンブルのオンライン化が進み、年齢制限が難しくなっているのが大きな要因だ。
ヨーロッパやオーストラリアでは、「ブックメーカー(通称ブッキー)」と呼ばれる、政府公認の賭け屋が存在し、競馬やドッグレースほか、さまざまなスポーツ、オリンピックやワールドカップなどの大会が、賭けの対象になっている。日本のプロ野球や格闘技が、賭けの対象になっている「ブッキー」も存在する。
なかでも最近の流行は「サッカーギャンブル」。若者にとって、スポーツギャンブルは魅力だ。そして、今一番の人気が、サッカーギャンブルなのである。
しかし、スポーツの高揚感とは裏腹に、スポーツギャンブルにのめりこむ若年男性は、多くの場合、抑うつが見られることが今回、示唆された。
ダッソー氏らの研究は、内面には大きな問題がないにも関わらず、"純粋に好きで"ギャンブルに傾倒する若者は、少なくとも思春期では稀であることも、明らかにしている。
これについて、ダッソー氏は、こう述べている。「若者のギャンブル問題の解決は、抑うつの治療と合わせ技の必要がある。また予防策として、早い段階で、衝動的な行動の多い子どものケアに着目し、リスク因子を減らすべきである」
窃盗や暴力など、青年期特有の非行とは異なり、ギャンブルの問題は、心理的な問題が絡むため、成人してからも改善されにくいという。
日本では、海外口座開設の煩わしさなどから、まだ「ブッキー」はそれほど浸透していないが、時間の問題である。身近な若者が、ギャンブル依存症になり、生活が破綻する前に、「抑うつ治療」をカギとして、手を打ちたいものだ。
(文=編集部)