長時間のデスクワークで乳がん!?shutterstock.com
毎日オフィスで長時間座ったままパソコンを見つめ、帰宅してからもテレビやパソコンの前に座り続ける。こうした生活習慣に思い当たる節がある人も多いのではないだろうか。デスクワークの弊害は、肩こりや腰痛、目の疲れだけではない。
スウェーデンで行われた研究により、長時間座り過ぎの女性は乳がんと子宮体がん(子宮内膜のがん)のリスクを高めるというということが明らかになったのだ。
[an error occurred while processing this directive] この研究は、今年4月に行われた米国癌研究会議(American Association of Cancer Research)で発表された。
研究チームは、研究開始時にがんに罹患していなかった25歳~64歳のスウェーデン人女性2万9000人から得た情報を分析。追跡期間は約25年だった。
被験者は、以下の3つの群に分けられた。
①デスクワークに従事し、就業時間後や休日に運動を行っていない
②デスクワークに従事し、趣味でランニングなどの運動を行っている
③教師など立つ機会が多く身体を動かす仕事に従事し、趣味で運動も行っている。
仕事でもオフでもほとんど身体を動かさなかった①の女性は、③の公私ともに身体をよく動かしていた女性より、子宮体がんと診断される確率が2.4倍高く、また閉経前に乳がんと診断される確率も2.4倍高かった。閉経後の女性の運動不足と乳がんリスクの増加の関連性は認められなかった。
研究著者の一人で、スウェーデン・ルンド大学の理学療法士アナ・ヨンソンは、「内勤者は座っている時間を少しでも減らすために、コーヒーを入れに席を立つなどちょっとしたことでも意識するとよいでしょう」と話している。
無意識のうちに悪影響を及ぼす点では喫煙リスクと同じ
このスウェーデンの研究結果は、運動不足とがんリスクの関連性を見出した過去の研究と一致する。2014年には、1日に座っている時間が2時間長くなるごとに、女性の子宮体がんリスクが10%、結腸がんリスクが8%増えるという研究結果が報告された
2011年の研究では、毎年米国の乳がん患者の4万9000人ほどが、運動不足と関連があると推定された。ちなみに、米国立癌研究所によると、米国では年間約23万人が乳がんと診断されている。一部の研究には、1日に何度か短い休憩を取り動き回ることが、がんリスクと関連する分子の血中濃度を減らすことを示すものもある。
また、2013年に行われたTEDカンファレンス*において、ルビコン・コンサルティング創業者のニロファー・マーチャント氏が、1日あたり人間が座っている時間は平均9.3時間で、平均睡眠時間の7.7時間を上回ると発表。
「今は座ったまま過ごすことが当たり前になり、それを危険だと思うこともありません。こうした点で、座るということはかつての喫煙問題のようなものといえます」と述べている。さらに、座り過ぎは乳がんや結腸がんだけでなく、心臓病や2型糖尿病のリスクも高めると指摘した。彼女はその解決策として、散歩をしながら会議を行う "ウォーキングミーティング"を提唱している。
1日中座り仕事ばかりで運動不足を自覚していても、乳がんや子宮体がんのリスクが身近にあると認識していた女性は少ないはずだ。とはいってもいきなり生活を変えるのは難しい。仕事中に席を立って休憩したり、少し遠くの店に昼食を食べに出かけたり、通勤時にひとつ手前の駅で降りて歩いたりなど、無理のないことから身体を動かすことをおすすめしたい。
また、休日もストレッチやランニングなど簡単にできるものから始め、座っている時間を短くすれば、がんのリスクを回避するだけでなく、ストレスが解消され精神的にもリフレッシュできるだろう。(参考:FOX NEWS)
(文=編集部)
*年1回、テクノロジー・エンターテインメント・デザイン分野を中心に、幅広く世界に広めるべきと思われるアイデアを専門家がプレゼンテーションする、大規模な世界的講演会。