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【連載第8回 恐ろしい危険ドラッグ中毒】

実録危険ドラッグ 軽い気持ちが一生血液透析を強いられる患者になる可能性も

急性腎不全で緊急血液透析をshutterstock.com

 危険ドラッグ中毒では、重篤な合併症を併発することがある。そのひとつは筋肉が破壊されて壊死が起こり、筋肉成分であるCPKやミオグロビンが血液中に流れ出てしまい、特にミオグロビンが血流によって腎臓に取り込まれて、尿が出にくくなり、ついには急性腎不全に進展してしまう。急性腎不全では手足のしびれや痛み、全身の脱力感、歩行できない、尿の色が赤褐色になるなどの症状が出現する。地震、雪崩などにて建物に長時間圧迫された状態で閉じ込められたりした際に起こる挫滅症候群や、大量の催眠薬、向精神薬、消炎鎮痛薬を服用して急性薬物中毒になっても発症することがある。危険ドラッグ中毒で、横紋筋融解症、急性腎不全を発症した患者さんの治療に携わった。

症例1 30歳代女性。長い間、精神科で統合失調症の治療を受けていた。札幌市内の繁華街で危険ドラッグ(RUSH)を購入して、約1か月間継続して吸入した。ある日、精神科で処方されていた催眠薬や向精神薬を合計88錠も服用して、そのまま寝込んでしまった。
翌日友人が意識朦朧となった状態で発見して、救急車を要請。搬送時には血液中のCPKは72,000 IU/L(正常値は50~200)、ミオグロビンも36,500 ng/mL(同200以下)と著明に上昇していた。更に腎臓の働きの指標であるクレアチニンは2.63 mg/dL(同1.00)と増加し、横紋筋融解症による急性腎不全と診断した。血液透析を3日間行ったところ、腎臓のはたらきは回復した。10日間入院して帰宅した。

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 急性腎不全は、腎臓の血液をろ過して老廃物を取り除く能力が急速に低下した状態であるため、薬物や毒物を体内から取り除き、血液検査の結果から腎機能が十分回復したことが確認されるまで透析が続けられます。血液を体外に取り出し、ダイアライザーという人工腎臓で血液をろ過して代謝性老廃物、この場合は土薬物や毒部を取り除いた後で、きれいになった血液を体内に戻すことになる。 
 

腎臓の働きが戻らないことも

症例2 10歳代男性、学生。ウイスキーを多飲して、危険ドラッグ(商品名不詳)を吸入した。脱力感を訴え、次第に意識朦朧となり、自宅に寝込んでしまった。翌朝家族に発見され、当院に搬送された。検査の結果CPK 49,000 IU/L、ミオグロビン18,800 ng/mL、クレアチニンは2.97 mg/dLと上昇していた。症例1と同様に血液透析を2日間行い、その後次第に腎臓の働きは改善した。5日後無事退院した。 
 
症例3 20歳代男性、フリーター。危険ドラッグ(Brain Fall)を2週間に渡って継続吸入し、自家用車を蛇行運転した。しばらくして空地に停車したまま朝まで車内で寝入った。翌朝通行人に発見されて救急搬送されている。CPK 17,200 IU/L、ミオグロビン9,650 ng/mL、クレアチニンは1.97 mg/dLとそれぞれ上昇していた。この患者さんはそれほど数値が悪くないため、血液透析を行わず、利尿剤、点滴などにて次第に腎臓のはたらきは軽快して4日後に退院した。 

 多くの危険ドラッグでは成分が現在でも明らかではなく、成分と横紋筋融解症や急性腎不全との因果関係が必ずしも判明していない。
今回の症例のように、ドラッグの長期連用、向精神薬、催眠薬やアルコールとの併用、さらにドラッグ使用後の発見、治療に遅れたケースで横紋筋融解症、急性腎不全の併発を招く大きな要因となっている。3人とも腎臓の機能が回復したのは不幸中の幸いであったが、元に戻らず慢性腎不全に進展し、一生維持透析療法が必要となることもあるので、危険ドラッグを使用することは厳に慎まなければならない。


連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」バックナンバー

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