国際シンポジウム『出生前診断とその国際動向2~脅威(Threat)からチャンス(Chance)へ』参加申し込みはこちら
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高齢出産や不妊治療の増加など、妊娠・出産をめぐる環境の変化で、周産期の医療や治療もその姿を変え始めている。その中でも2013年4月に全国の大学病院など限定された医療機関で臨床研究として始まった新型出生前診断をめぐっては大きな議論が巻き起こった。
この新型出生前診断は、母体の血液検査だけでダウン症など3種類の先天的疾患が分かるというものだが、安易な診断が「選択的堕胎」、つまりは命の選別につながるとする批判も少なくなかった。一方では中国企業の安価な検査システムの強力な売り込みが行われ、日本医学会臨床部会運営委員会が「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する最近の報道について」とする声明を発表し、行き過ぎた利益優先の検査ビジネスに警鐘を鳴らしている。しかし、現実にはいまだアンダーグラウンドでの検査ビジネスが横行し、海外に渡航して検査を受ける事例もあるという。
[an error occurred while processing this directive]こうした現状に対し、そもそも出生前診断とはどんなものなのか、どんなことが分かり、その対応策にはどのような選択肢があるのか。基本的な理解さえないままに議論が空回りしているとする医師もいる。出生前診断に限ったことではないが、医療技術の進歩と人間がどのように向き合うのかは、常に真摯な議論が必要であり、ことは日本国内だけの問題ではなく世界共通のテーマだ。
課題とどう取り組むのかを考えようとするシンポジウムが2月13日に東京で開催される。
診断と治療が十全に機能することが理想的な医療の姿
『出生前診断とその国際動向2~脅威(Threat)からチャンス(Chance)へ』と題されたこのシンポジウムには、海外から新型出生前診断の世界的権威であるアメリカタフツ大学のDiana W. Bianchi教授、胎児治療領域における最先端技術の研究の第一人者マウント・サイナイ医科大学のMark Evans教授、国際出生前診断会議の副会長であるHaword Cuckle博士の3人、国内からは大阪で日本初の出生前診断専門のクリニックを立ち上げた夫律子院長が参加。最新の医療情報や将来展望、世界各国における出生前診断や胎児治療の現状を紹介するという。
特に今回は、Bianchi教授がすすめるダウン症候群の胎児診断と早期の治療の可能についての衝撃的レポートが大きな関心を集めている。ダウン症候群と診断された場合に早期にある種の治療を行うことによって、中枢神経系の発達改善の可能性があるという研究だ。この研究は、将来的に胎児期にダウン症症候群の胎児の治療の可能性を示すものとなる。
シンポジウムを主催する「一般社団法人未来の胎児と医療を考える会」の代表を務める千葉敏雄・国立成育医療研究センター 社会・臨床研究センター 副センター長は、「本来、診断とそれにもとづく治療が十全に機能することが理想的な医療の姿。世界の最先端の出生前診断やその診断を利用した治療の可能性も紹介しながら、全体としてシームレスな胎児ケアの可能性を見ていきたい」とする。
さらに千葉代表は、「今回は医療従事者や研究者だけに向けたシンポジウムではなく、ごく一般の社会の方々やメディアの方の参加を想定し、可能な限り医学専門用語は避けて、正確・最新であると同時に平易な講演となるよう心がけ、そのために専門家の立場からのサマリースピーチも用意しています。ともすると出生前診断は正しいか正しくないか、どちらかを選択すべきであるかのような単純な善悪論や迷路のような倫理論争に終始している日本の現状の中で、本シンポジウムが、専門家のみならず妊娠・出産を控えている女性や家族、あるいは障害児を育てている家庭なども巻き込んだしっかりとした議論のきっかけになることを願っています」と話している。
(文=編集部)
シンポジウムの概略
<期 日> 2015年2月13日(金)
<時 間> 午後6時~午後9時(開場 午後5時30分)
<会 場> 大手町サンケイプラザ / 東京都千代田区大手町1-7-2
<定 員> 200名(無料、日英同時通訳あり)※定員になり次第締め切り
<主 催> 一般社団法人 未来の胎児と医療を考える会
<後 援> HEALTH PRESS、産経デジタル、