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自殺未遂を経験した親を持つ子どもは、自殺を企てる確率が5倍に跳ね上がる!

親の自殺・自殺未遂が子どもの自殺願望を駆り立てるのか? ixus/PIXTA(ピクスタ)

 日本の自殺者数総数は2012年にようやく3万人を切り、2014年までは5年連続で減少している。警察庁の発表によれば、特に経済問題や生活問題を動機とする自殺者が減っているという。

 その一方で、15~39歳の各年代では、死因のトップが「自殺」という、極めて深刻な状況が続いている。特に15~34歳の若い世代で死因の1位が自殺というのは、先進7ヵ国では日本だけだ。

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 昨年12月、そうした若年層の自殺防止の手がかりになるかもしれない研究論文が、アメリカで発表された。それによると、自殺未遂経験がある親を持つ子どもは、そうでない場合に比べて自殺行為を行う危険性が500%にも上がるという。

 オンライン版「JAMA Psychiatry」に掲載されたこの論文は、ピッツバーグ大学医療センターのDavid Brent氏らの研究結果に基づくもので、同チームは「うつ病」や「双極性障害」(躁うつ病)などの気分障害がある親334人と、彼らの10〜50歳までの子ども701人を調査・追跡している。

 親たちのうち、過去に自殺をしようとした人は191人。そして、その親の子どもでは、44人がこの調査に参加する以前に自殺未遂をしていた。さらに6年近くにわたる追跡調査中に、29人の子どもが自殺を試みたという。この結果を、親が自殺・自殺未遂した経験がない子どものデータと比べたところ、彼らが自殺を試みる危険性は5倍にもなった。

 より詳細な分析においても、親の自殺未遂が子どもの自殺未遂に直接影響を与えていることが示唆されたという。さらに「衝動的な攻撃性」などが気分障害と密接に関係しており、こうした傾向を注意深く観察することで、家族性のリスクが高い若年者の自殺未遂に予防的に介入できることもわかってきた。

 David Brent氏は、「こうしたリスクを見極め、早い段階でうまくケアをすれば、親と同じ道をたどらないように守れるのではないか」とコメントしている。

血液検査で自殺リスクが予想できる?

 アメリカでは昨年7月にも、自殺をめぐる興味深い論文が発表されている。自殺を図る人々が共通して持つ、遺伝子変異が発見されたというのだ。

 米ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは「SKA2」と呼ばれる遺伝子に注目。自殺した人々から採取した脳サンプルを調べたところ、SKA2のレベルが健康な人に比べて著しく低下していることを突き止めた。

 SKA2遺伝子が変異を起こすと、ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」の制御がきかなくなるため、自殺のリスクが上昇するという。さらに研究者らは、計325人の対象者の血液検査を実施。それにより、SKA2の変異により、自殺願望を経験している人や自殺を図ったことがある人を80%の精度で予測できると発表したのだ。

 こうした研究の成果が実用化されるまでには多くのハードルがあるだろう。しかし、自殺の当事者は本人だけではなく、家族や友人など多くの人を巻き込み、身を切るような思いをさせる。これからもリスクを明らかにし、予測し、未然に防ぐ方法が確立されていくことを願いたい。
(文=編集部)

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