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【連載「心に響く闘病記ガイド」第2回】

食道がん闘病記〜父のがんが見つかって5カ月間、家族は何ができたのか?

『親ががんだとわかったら――家族目線のがん治療体験記』(はにわきみこ/文藝春秋)

 家族ががんになったときに、家族はどのように対処したらいいか? そのノウハウを家族目線で教えてくれる一冊です。72歳の父が食道がんと告げられ、手術・退院までの5カ月間に、家族は何を分担し、どう動いたのか―--。著者のはにわきみこさんは、病院選び、入院グッズの準備、費用などの情報を集め、母親や妹と対処のための役割分担をを決めます。看病のために自分たちの仕事はどうするか、父親の病気を誰に伝えるか、面会の送迎は誰がするか、術後のマネープランはどうするか、さらには最悪のケースも想定して、葬儀やお墓のことも考えます。家族が看護疲れでダウンしないために、参考になることでしょう。

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『おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒――江國滋闘病日記』(江國滋/新潮文庫)

 著者は小説家・江國香織さんの父で、俳句ブームの火付け役だけでなく、辛口ながらユーモアあふれる随筆家として知られる江國滋さん。江國さんの没後に刊行され、書名は「敗北宣言」と題された辞世句でもある。正岡子規『病床六尺』の現代版ともいえる作品で、闘病日記とともに闘病俳句223句が収録されています。食道がんの場合、手術の影響でしばらく絶食の日々が続くのだが、江國さんはテレビでグルメ番組ばかり見ていたのが興味深い。また、入院中に映画『お葬式』(監督:伊丹十三)を見てしまい、「病人が見るもんじゃない」とぼやいてもいる。


『がんで逝くひと、送るひと』(池田朝子/三省堂)

 著者の池田朝子さんは、77歳で食道がんになった父親を、ヘルパーなどの助けを借りずに母親が自宅で介護し、家族で看取りました。それが父親にとって、また家族にとって正しいことだったのか―--、「自宅で死にたい」という父親の願いをかなえたこと、介護の負担が限界を超え「もうできない!」と叫んだこともある母親が「後悔しない介護をした」と自己肯定できたことなど、決して悪い間違った判断ではないかと振り返ります。また池田さんは、父親の死と同時に大学院に入学し、医療福祉ジャーナリズムを学んでいます。父親の看護・闘病記録であると同時に、「患者家族学」の現状がよくわかる一冊です。




星野史雄

星野史雄(ほしのふみお)
東京家政大学非常勤講師。1997年、妻が乳がんで亡くなったことをきっかけに闘病記を集め始め、翌年、闘病記専門古書店「パラメディカ」を開店。自信も2010年に直腸がんが見つかり、手術。大腸がんの闘病記を過去に100冊以上読んでいた知識が、自身の闘病にも役に立っている。共同編著に『がん闘病記読書案内』(三省堂)。自らの闘病体験を記した『闘病記専門書店の店主が、がんになって考えたこと』(産経新聞出版)がある。

連載「心に響く闘病記ガイド」バックナンバー

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