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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第22回】

世界で初めて「精液解析」で強姦殺人犯を逮捕したピッチフォーク・ケリー事件

事件が起きたのは英国レスター市郊外のナーボロウ(shutterstock.com)

 イギリスのほぼ中央部、東ミッドランズ地域にヴューチェダーの名で知られるチーズの名産地、レスターシャー州がある。ロンドンの北約160km、特急列車でおよそ2時間。レスター市は、2000年もの馥郁とした歴史を刻みつつ、レスター大学など学術研究の英知に育まれた人口約28万人の文化・商工業都市だ。

 レスター市郊外の小さな街、ナーボロウ。気温0℃。厳冬の冷気が常闇を凍らせるような新月の夜。陰惨な魔の手が街の平穏を襲う――。

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世界初のDNA鑑定が明かした少女強姦殺人事件の意外な真相!

 1983年11月22日早朝7時ころ、近くの病院に勤める事務員、ウイリアム青年の急ぎ足が止まる。「何?……死体?」。道ばたに横たわる女性を見つけるや、病院に向かって脱兎のように駆け出すウイリアム青年。病院からの通報でナーボロウ警察は、現場に急行し、被害者の死亡を確認。検視の結果、死因は強姦された後にスカーフによって絞殺されたと判明。推定死亡時刻は前夜未明。被害者は近くに住む高校生のリンダ・マン15歳。事件前夜、午後7時30分頃、友人宅から帰宅する途中に行方不明になった。

 内務省法科学研究所は、被害者の膣内の精液斑痕の解析から、犯人の血液型はB型と断定する。だが、犯人を特定する決定的な物的証拠はなく、目撃者もない。捜査は暗礁に乗り上げた。

 事件から2年半後の1986年7月31日の早朝、隣町のエンダービーで高校生のドーン・アシュワース15歳の遺体が発見される。死因は、リンダと同じく強姦後の絞殺死。ナーボロウ警察は、犯行の手口が酷似していることから、同一犯の凶行と踏む。内務省法科学研究所は、ドーンの膣内の精液斑痕を解析し、犯人の血液型はB型と断定。ナーボロウ警察は、加害者は同一人物であると心証を強める。

容疑者を逮捕したもののDNA指紋は不一致

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