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【腸内細菌を徹底解剖 第12回】

腸内細菌は約300種類、約100兆個以上!  腸内フローラの役割は何? 

腸内細菌の集まりが「腸内細菌叢(腸内フローラ、マイクロバイオーム)」だshutterstock.com

 宇宙が誕生して138億年、太陽は50億年、地球は46億年。原始生命体が地球に出現<て約38億年――。過酷な環境をものともせず、原始生命体は進化を遂げ、夥しい微生物群が繁殖して生息圏を広げた。

 しかし、約27億年前、原始地球の生態系がついに激変する。原始地球の大気を「嫌気性」から「好気性」に切り替える微生物が突如、姿を見せた。酸素呼吸するシアノバクテリアが原始地球の覇者となった瞬間だ。それは、低温・高温・低圧・高圧の極限的環境でも生き延びる、まさに微生物群のビッグバンだった。こうして原始地球が生命を生み、生命は地球環境を進化させつつ、地球の生態系が形成されてきた。

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 現在、地球上で確認されている生物は175万種。微生物(細菌、菌類、ウイルス、藻類、アメーバやゾウリムシなどの原生動物)は17万種。10の30乗個の常在細菌、ヒトの唾液1ml中に1000 億個の口腔細菌が生存する。先進のバイオテクノロジーをもってしても、科学的に解明できる微生物はわずか約5000種。未だ人知が及ばない微生物は、およそ50億種に上ると推定される。

腸内細菌は約300種類、約100兆個以

 ヒトの胎児は、母体内でおよそ1年間、微生物が存在しない無菌状態だ。しかし、生まれた瞬間に、産道、離乳食などの外的環境に触れると、微生物が新生児の口腔や肛門などから侵入する。感染した微生物の一部は、皮膚表面、口腔内、胃腸などの消化管内に定着し、それぞれの定位置を支配する常在細菌となる。

 ヒトの体内には、600兆個を超える常在細菌が、皮膚、口腔、鼻腔、泌尿生殖器に棲みついている。 皮膚なら、頭皮、顔、胸、背中、腕、脇、足、腋の下などに、ブドウ球菌属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属などの常在細菌が、1cm四方当たり平均100万個も生息する。

 これらの常在細菌の中で、最も重要な生体制御に関わっているのが腸内細菌だ。腸は約300種類、およそ100兆個以上、大きさ1000分の1mm、重量1〜1.5kgの腸内細菌が棲みつく大宇宙だ。100兆個はヒトの細胞数60兆個よりも多い。

 腸のうち、十二指腸や小腸上部は、強酸性(pH1〜1.5)の胃酸の影響で細菌数が少ないが、腸の下部に行くほど細菌数が増え、大腸や直腸は、細菌数がほぼ一定に保たれている。

 ヒトの糞便の3分の1は腸内細菌で、 糞便1g当たり10億~1000億個もの腸内細菌が棲みつく。大腸内は、窒素、二酸化炭素、水素、メタンガスが充満した、酸素が稀少な嫌気性環境。クロストリジウム属、バクテロイデス属、ユウバクテリウム属、ビフィドバクテリウム属などが棲息する。腸内細菌は、絶えず増殖を繰り返しつつ、競合し合いながら、複雑な生態系を構築している。

腸内フローラの役割は何か?

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