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【シリーズ医師の本音「ドクターズ・ヴォイス」第5回】

働けど働けど心も体もクタクタ! 体調不良をだれにも相談しない勤務医は53.3%も!

疲れても誰にもいえない医師たちshutterstock.com

 7月6日発行の「JAMA Pediatrics」オンライン版に掲載された、米国フィラデルフィア小児病院(CHOP)のJulia Szymczak氏らの研究論文によれば、多くの医療従事者は、体調不良にも関わらず働いていることが分かった。なぜだろうか?

 医療従事者が病気の時に出勤すると、患者を重篤な疾患や死亡のリスクにさらすことがある。Szymczak氏らは、医療従事者が体調不良時に自宅で休まない理由を調べるために、医師、看護師、医師助手、麻酔専門看護師、助産師など500人以上を対象に無記名のアンケートを行った。

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 その結果、体調不良時に働くことは患者を危険にさらすと答えた人は95%に上った。過去1年以内に1回以上、下痢、発熱、重大な呼吸器障害などの症状がある状態で働いたことがある人は83%、5回以上働いたことがある人は9%だった。

 休まなかった理由は、同僚の期待を裏切りたくなかった98%、人の手配を心配した94%、患者を失望させたくなかった92%、同僚から疎外されたくなかった64%、症例の連続性を懸念した63%などだった。

 Szymczak氏らは、「今回の研究は、このような行動がシステム的および社会文化的要因から引き起こされることを示している。この問題を改善するには、仕事量や患者数の変動を考慮し、柔軟に対応しなければならない。また、労働衛生と感染制御の視点から、病欠の基準を明瞭にすることが不可欠だ」と話している。(HealthDay News 7月6日)

 昔から、医者の不養生と揶揄され、自分の健康管理もできない医者を信頼できるのか?などの風潮がある。医療従事者の労務管理、労働条件を改善する動きはあるが、病院の医療資源や治療環境の壁に常に阻まれる。

体調やメンタルヘルスの不調を他人に相談しないのは、なぜ?

 日本医師会臨床研修医支援ネットワークが発行する情報誌「DOCTOR-ASE(ドクタラーゼ)」によれば、2009年、日本医師会は過酷な勤務環境に耐えながら働くことが、医師の心と身体にどんな影響を及ぼすのかをアンケート調査した。

 「簡易抑うつ症状尺度(QIDS)」を調べると、抑うつ状態である11点以上が8.7%。約12人に1人は、メンタルヘルスのサポートが必要であることが分かった。休職や薬物療法が必要なうつ病と想定される16点以上は1.9%。約50人に1人は、すぐにでも休職や薬物療法が必要な状態だ。

 自分の体調不良を他の医師にまったく相談しない勤務医は53.3%。その理由は、自分で対応できる自信があるから54.6%、同僚に知られたくないから10.7%、自分が弱いと思われそうだから6.0%。医療のスペシャリストというプライドと、弱みを見せたくない気負いに負けて、ムリをしてしまう医師が多い。

 医師が病院に求めている要望は、次の点だ。休日や休暇を充分に取りたい。医療事故が起きた時は、病院が守ってほしい。医師としての業務に専念したい。子育てや介護をしながらでも、安心して働きたい・・・。
 勤務医たちの切実なヴォイスが聴き取れるだろう。
(文=編集部)

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