「医師たちの恋愛事情」(フジテレビ系)のHPより
4月9日、連続ドラマ「医師たちの恋愛事情」(フジテレビ系)がスタートした。「医療ドラマ」と「恋愛ドラマ」が融合した「医療ラブストーリー」という触れ込みだ。大学病院を舞台に、医師たちがそれぞれの「秘密」を抱えつつ、出世争い、恋愛、不倫、三角関係とさまざまな欲望が渦巻く中で生きていく姿を描く。
話題のひとつは、昨年社会現象を巻き起こした『昼顔~平日午後3時の恋人たち』で女性ファンを虜にした斎藤工による連続ドラマ初主演。今、最もセクシーな俳優といわれる斎藤が患者を救うことだけを考える熱血外科医・守田春樹を演じる。
[an error occurred while processing this directive]初回は石田ゆり子演じる先輩医師との出会いを軸に物語は進む。病院の実権を握るのは、経営管理部長の渡辺幹夫(生瀬勝久)。医師ではないが、この赤字病院を劇的に立て直したやり手だ。患者を"顧客"と呼び、売り上げ第一主義で費用効率ばかりを考えている。
総回診に臨む教授を「今日も威厳をもってお願いします。"顧客"が喜びますから。パンダになったつもりで......」と送りだす。劇中では"恋愛事情"だけでなく今の"医療事情"も描かれている。
ある日のカンファレンスで守田は、間もなく退院する患者の不調を報告。追加検査を申し出る。だが渡辺は、一度退院して再度外来での受診を指示する。
舞台となる大学病院は「DPC制度」導入しており、検査や処置、投薬はすればするほど病院側の損失になるからだ。また、医療費を請求できるのは1病名に対する医療費のみ。渡辺は「もし入院中に2つの病気を治療しても、原則的に一方の治療費しか病院は請求できない。別の病気の分はタダ働きになる」と説く。
「お金のことを気にしている場合ではない」と反論する守田。「急を要する検査ですか」「それを確認するために検査したいんです」。「私は医療に関して素人なので、わかりやすく説明してください。500人の入院患者、1日1000人の外来患者の対応を後回しにして、病院に損をさせても今日やらなければならない検査ですか?」と迫る渡辺。
「患者さんにためにできることを全てやるのが医者の務めだと思います」「"思います"? あなたの思いはどうでもいい、医者なら客観的に答えてほしい」。ドラマでは、再受診となって退院した患者が急変し、救急搬送の末に亡くなる。
公立病院の約半数が赤字、倒産、経営譲渡......先行き不透明な医療業界
2014年8月、医療法人緑生会(千葉県)が負債総額約63億7900万円で民事再生法の適用を申請。総合病院から介護老人保健施設の運営も手がける同法人は、業容拡大を狙い総合病院を新設して、わずか1年半後の破綻だった。
高齢化社会が進むなか、市場拡大が期待されてきた医療・介護関連業界だが、ここ数年で年間30~40の医療機関(歯科医院含む)が倒産している。病院間競争も激しくなり、差別化を図って最新の医療機器導入し、高額な設備投資で借金に苦しむ病院も少なくない。
2014年3月、全国公私病院連盟と日本病院会の「平成25年 病院運営実態分析調査の概要」(集計数957病院)によると、回答した616病院のうち約7割が赤字(同年の6月分だけの収支)だった。
赤字経営は公立病院ではいっそう深刻だ。総務省は、全国約900の公立病院の約半数が赤字(25年度)と発表。大幅な赤字を抱えた公立病院を抱える自治体が民間に経営委託を進めるケースが増えている。帝国データバンクによると、赤字病院は3年連続で増加。自治体病院は91.2%、公的病院は52.9%、私的病院は37.6%が赤字だったという。赤字病院が別の医療法人に経営譲渡する例も続発している。
社会保障費の財源確保は難しく、病院も効率的な経営が迫られている。だが、医療制度改革や診療報酬の改定で、病院の多くが悲鳴を上げる。国の打ち出す方針は数年で転換され、病院は医療行政に振り回されてきた。
ドラマでは、「利益のために患者を放り出すなんてできない」「患者はたくさんいる。一人だけを特別扱いできない」「病院が潰れたら患者だって診られないぞ」「我慢することになるのは患者だと思います」というシーンが入る。
「団塊の世代」が後期高齢者となる「2025年」は、少子化や労働条件等の問題から深刻な人手不足に陥ることが危ぶまれている。ドラマには、セクシーな外科医の活躍はもちろん、"私たちの医療事情"も「わかりやすく」描かれることに期待したい。
(文=編集部)