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【腸内細菌を徹底解剖 第2回】

日本人の腸の老化は深刻な状態!? あなたの腸年齢は何歳?

肉類を多く食べると大腸がんになりやすい shutterstock.com

 前回は、腸内細菌と病気の関わりについて話した。今回は、腸の老化と腸年齢について話そう。

 腸も歳とともに老化する。腸年齢は、便の色や形、便の中の腸内細菌のバランス、食習慣の状況などをチェックすればよく分かる。

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 腸内細菌の研究で知られる酪農学園大学の辨野義己(べんのよしみ)特任教授が実施した「腸年齢チェックテスト」がある。

 東京・大阪に住む20代〜60代の女性600人を対象にした「腸年齢と健康に関する調査」によると、実年齢20代の平均腸年齢は45.7歳、実年齢30代の平均腸年齢は51.3歳、40代の平均腸年齢は54.2歳。実年齢25歳で腸年齢が74歳の人もいた。まさに"腸"高齢者。日本人の腸の老化は予想以上に深刻で、整腸力が落ちていることが明らかだ。

 この調査では、腸年齢の若い人ほど脳機能の衰えが少なく、老化もゆっくりと進むことが判明した。腸年齢の若い人は、肌の悩みが少なく、健康状態や体力、気持ちの持ち方、外見も若い。腸を若々しく保てば保つほど、何歳になっても病気に罹りにくい健康体を維持できる。腸年齢の若さを保つことは、健康長寿に欠かせない。

肉類の過剰摂取が大腸がんのリスクを高める

 急速な高齢化に伴って、毎年約6万人が罹っている大腸がん。罹患の頻度は男女ともほぼ同じだが、罹患者は60代が最も多く、70代、50代と続く。若年者は、遺伝的な要因も関連するという。がんの死因別では、大腸がんは女性の第1位、男性の第3位だ。1960年〜2010年の50年間の大腸がんの死亡率を見ると、男性は人口10万人当たり5人から40人へ8倍に、女性は5人から30人へ6倍に、それぞれ急増している。

 大腸は、胃、小腸で消化吸収された食べ物を最終処理し、主に水分などを吸収する。大腸がんは、長さ約1.5mの大腸(盲腸、結腸、直腸)に発生する悪性腫瘍だ。日本人は、S状結腸と直腸に発症しやすい。大腸がんは、大腸粘膜の細胞から発生し、腺腫という良性腫瘍の一部ががん化するがんと、正常粘膜から直接、がん化するがんに大別される。

 大腸がんは、ゆっくり進行する。腸粘膜の表面から大腸の壁に深く侵入しながら、進行に伴ってリンパ節や肝臓、肺などの臓器に転移する。便に血液が混じっているかを検査する便潜血検査が有効だが、早期発見できれば、がんを完全に除去できる可能性は高い。

 大腸がんが急増している主因は、肉類、乳製品、ファストフードやスナック菓子などに偏った食生活だ。戦後の洋食化が引き金になり、長年にわたって肉類などの動物性の脂肪やタンパク質の消費量が大幅に増え、野菜などの食物繊維の摂取量が減ってきた。例えば、肉類の1人当たりの年間消費量は、5.1㎏(1960年)から29.1㎏(2010年)へ、50年間で約6倍に増えていることからも明らかだ。

 なぜ肉類は、大腸によくないのだろうか? 肉類は、タンパク質や脂肪、鉄分などを豊富に含んでいるので、バランスよく食べれば問題はない。しかし、過剰な肉食中心の食生活が続くと、腸内に悪玉菌が増え、腸内細菌のバランスが崩れる。その結果、大腸がんをはじめ、アレルギー疾患、肥満症や糖尿病、自閉症、パーキンソン病など、さまざまな病気の引き金になる恐れがある。

 肉類に偏った食生活を改善しよう。肉はバランスよく食べることが、腸の老化を緩和し、腸年齢を若々しく保つためにも大切だ。

 今回は、腸の老化と腸年齢について話した。次回は、大腸がん発症のリスクと食生活について話そう。

「腸内細菌を徹底解剖」バックナンバー

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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