健康維持や、メタボ体型の改善に運動をする大人世代は多い。だが、熱心に運動している人でも、つい怠りがちなのが、股関節を動かすストレッチだ。上半身と下半身をつなぐ要になるのが股関節。股関節周りの柔軟性を維持すれば、腰痛や、メタボ、生活習慣病、動脈硬化、心筋梗塞、股関節や膝関節の痛みなどの予防・改善に役立つ。
股関節は、骨盤と2本の大腿骨を結ぶ大きな球状の関節。腸腰筋(背骨・骨盤・足の付け根を結ぶ筋肉)や大殿筋(お尻の筋肉)など多数の筋肉や紐帯によって支えられ、全身運動や筋肉バランスを絶妙にコントロールしている。
[an error occurred while processing this directive]人間が二本足で立ち、歩き、走り、座り、体を自由に動かせるのは、股関節のおかげ。しかも、下半身に栄養を送る動脈や老廃物を回収する静脈、リンパ管が周囲に密集する。文字通り、全身運動の中枢だ。
「パーソナルトレーニング どこでもフィット」を主宰し、年間延べ4000人の個人指導を行うパーソナルトレーナーの小林素明さんは、次のように解説する。
「40歳を過ぎると、運動不足や加齢によって、筋肉の血流の滞りが起き、股関節周りの筋肉が硬くなる。正しいストレッチを習慣化すれば、下半身の筋肉が鍛えられて血流がよくなり、体がスッキリ身軽になります」
実は股関節には、体重に換算すると、立っているだけで約0.6~1倍、徒歩で約3~4.5倍、ジョギングで約4~5倍、階段の上り下りで約6~8倍の負荷がかかっている。大きな負荷を受けて、下半身の筋肉の伸縮性が低下すると、血流やリンパの流れが悪くなり、その結果、筋肉や組織に老廃物や皮下脂肪が溜まり、新陳代謝が一気に悪化するのだ。
小林さんは、運動にあたっては「股関節を正しく動かすことが重要」という。自己流では効果が得にくいためだ。
小林さんが勧める股関節を動かすストレッチは2つ。ひとつは「A)股割り肩入れストレッチ」。ヤンキースのイチローが打席に入る前に行なうのでお馴染みだ。大殿筋、階段を上る時に使う腸腰筋、内転筋(内もも)を鍛え、血液やリンパの流れがスムーズになる。
「ひねりの柔らかさによって、身体のキレやスピードが高まり、ゴルフの飛距離も伸びます。下半身のむくみが解消されるので、デスク業務の多い人にもおすすめ」
注意すべき点は、ひざに当てる手の位置だ。肩を前に出す方の手のひらが、きちんとひざの内側にあてられているか、ひじがまっすぐ伸びているかがポイント。自己流で行うとつい、手のひらが膝頭の上にくることがある。「体をひねった時に、バットスイングと同じように背骨がまっすぐ伸び、肩が自然と前に出るのを意識することです」
A)股割り肩入れストレッチ
①両足を広めに開き、つま先をやや外側に向けて立つ。
②両手を太ももの先端に置き、ゆっくりと股を広げながら腰を落とす。
③首を右に向けながら、左膝の内側(内もも)に左手を押し当て、体を右側にひねる(股割り)。背筋をまっすぐ伸ばし、左ひじをまっすぐ伸ばすと、左肩が正しく前に出る(肩入れ)。そのまま20秒キープ。
④右も同様に行なう。
もうひとつが「B)膝まげお尻の筋肉伸ばしストレッチ」。職場で机に向かって仕事をすることが多い人に特にお勧めだ。「大殿筋が伸び、血流もよくなるので、下半身の柔らかさが改善され、疲労の回復や肥満の予防にも効果がある」
このストレッチのポイントは、背筋、首筋をまっすぐ伸ばすことと、足を床に平行になるように膝に乗せること。特に気をつけたいのが背筋。
「意識してまっすぐ伸ばす。曲げているつもりでも。背筋が丸まっていれば効果は半減。膝は、床に平行に保つのがきつければ、ムリに押さえ込まないことも大切です」
B)膝まげお尻の筋肉伸ばしストレッチ
①背筋を伸ばして椅子に座る。左足を右膝の上に床に平行になるように乗せ、両手を添えたまま20秒間静止する。
②背筋を伸ばして前方斜め下を見ながら、上体をゆっくりと前に倒す。このとき、背筋、首筋を一直線になるように意識して伸ばし、背中を丸めないのがポイント。20秒間静止する。
③右足に変えて、同様に行なう。
*股関節は体の土台。下半身の筋肉をよく動かし、股関節を柔らかくするストレッチを始めよう!