寝る前にPCやスマホの明るい画面を見続けると体内時計が狂う!?shutterstock.com
夜も明るい環境や、夜遅くまでPCやスマホなどのLEDディスプレイの光を浴び続ける生活は、人類が誕生して以来初めてのこと。この環境が「体内時計」を乱れさせ、自律神経系や内分泌系、免疫系にも悪影響を及ぼすことが、さまざまな研究によって指摘されている。寝つきが悪い、眠りが浅いといった「睡眠の質の低下」も、その一つだ。
最近、『BMJ Open』(2015年2月)に「日中の長時間におよぶ電子機器の使用は、10代の若者の睡眠に有害である」という研究論文が掲載された。
[an error occurred while processing this directive]研究では、16〜19歳のノルウェー人約1万人に、学校以外での電子機器の使用時間と睡眠の量・質について質問。その結果、日中および就寝前に電子機器を使用していると、眠るまでの時間(入眠時間)が60分以上長くなるリスクが高くなっていた。特に、就寝前のPC、スマートフォン、MP3プレーヤーの使用は入眠時間の延長に強く関連していたという。
また、日中に4時間以上、電子機器を使用すると、入眠時間が60分以上長くなるリスクが49%上昇。睡眠時間が5時間未満になるリスクは、電子メールやチャットを2時間以上行う若者では3倍、内容にかかわらず使用時間が4時間以上の場合では3.5倍になった。
コンピュータは睡眠不足と最も強く関連し、電子機器を複数使用する若者は、1個だけの場合に比べて入眠時間が長くなり、睡眠時間が短くなる可能性が高かった。
研究では、「今回の結果は、若者の電子機器使用に関するガイドラインを更新し、保護者へのガイダンスを提供する必要性を示している」という。ただし、今回の研究は、電子機器が実際に睡眠障害を引き起こすかどうかを証明するものではない。
ディスプレイの光が「体内時計」を乱す
電子機器の使用が睡眠に与える影響に関する警告は、2007年に英紙『デーリー・テレグラフ』が英エディンバラ睡眠センターによる「就寝1時間前の電子メールのチェックは睡眠を妨げる」との研究結果を掲載している。濃いコーヒーのエスプレッソ2杯分を飲むのと、同じ不眠効果があるという。
研究では「ディスプレイの光が、眠りを助けるメラトニンの分泌をストップするよう、脳にシグナルを送ってしまう」と指摘。「静かさや暗さ、快適さとともに、リラックスした環境が十分な夜の眠りを確保する」と述べ、携帯電話でのチェックを含め、寝る前のメールに注意を呼び掛けている。
全ての生物は、生命を維持するための「体内時計」を持っている。日が昇ると目覚めて活動し、日沈とともに仕事をやめて脳と身体を休める。効率よく生きるために太古の昔から獲得してきた、健康を維持するための「サーカディアンリズム(Circadian Rhythm)」だ。
ヒトの場合は、網膜に届く光の量や食事のタイミングなどで体内時計がコントロールされている。近年、サーカディアンリズムのコントロールには、ヒトの目の網膜が大きな役割を果たしていることが明らかになった。網膜の中に、強いエネルギーを持つ光だけに反応する、新たな光受容体の存在することがわかったのだ。
この「強い光」こそ、電子機器のディスプレイなどで使用されているブルーライト。網膜が強いブルーライトの刺激を受けると、脳が「朝」と判断し、睡眠を司るメラトニンというホルモン分泌が抑制されて覚醒する。一方で、ブルーライトの量が減少すると「夜」と判断してメラトニンが活発に分泌される。
サーカディアンリズムを乱すブルーライトだが、一方ではリセットするためにも必要なもの。時差ボケの解消には、日光を浴びるといいといわれるのは、ブルーライトを多く含む太陽光でサーカディアンリズムがリセットされるからだ。
今後も、電子機器およびブルーライトが与える健康への影響に関する研究は続きそうだが、少なくとも、日中の長時間使用と就寝前の使用は避けるべきだろう。
(文=編集部)