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青魚などに含まれる「オメガ3脂肪酸」は、アルツハイマー病治療の救世主になる?

サバなどの青魚には「オメガ3脂肪酸」が大量に含まれている

 高齢化が進むとともに、日本の大きな健康課題になりつつあるの認知症。最近「あれ何て名前だっけ?」「また◯◯を買い忘れた!」など、自分に何となく不安を感じることが増えてきた人も多いだろう。

 認知症の中でも、脳の神経細胞が徐々に死んでゆく「アルツハイマー型認知症」と、脳の血管の障害が原因で起こる「血管性認知症」が代表的であり、近年日本人には、アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー病)の方が多いことが分かってきた。

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 しかし、特にアルツハイマー病には、今のところ確実に進行を止める手だてがない。そのため、予防を重要視した研究が多数行われているわけだが、中でも特に有効性が認められ、注目されてきたのが「オメガ3脂肪酸」だ。

 オメガ3脂肪酸には、神経細胞を構成するDHA、体内でDHAに変換されるEPAやαリノレン酸などがあり、青魚を始め、荏胡麻(エコマ)油、紫蘇(シソ)油、亜麻仁(アマニ)油、クルミなどの食品に豊富に含まれている。

 動脈硬化を防ぎ、血圧やコレステロール、中性脂肪を下げ、生活習慣病の予防に効果を発揮することは、よく知られている。

 今回はもう一歩進んで、高齢者の脳萎縮の防止など、認知機能の保護にも有効であることがアメリカの研究で明らかになったというのだ。

●高齢者の脳を守るオメガ3脂肪酸

 

 アメリカ・ニューイングランド地方にあるロードアイランド病院の医師たちは、55~90歳の高齢者819人を対象に、彼らの脳の状態を調べるため6カ月ごとに「神経心理学的検査」とMRIを実施。開始時点で、819人のうち229人は認知機能が正常であり、397人は軽い脳萎縮があり、193人はアルツハイマー病を患っていた。

 この結果、開始時に正常だったグループで魚油のサプリメントを常用した人は、認知機能の低下がはっきりと抑制され、MRI撮影の結果でも認知機能に関係する脳の萎縮が軽減されていたという。これはDHA・DHAの摂取が、健康な高齢者のアルツハイマー病予防につながることを示している。

 実は数年前の研究ではあるが、オメガ3脂肪酸がごく初期のアルツハイマー病の進行を抑える可能性があることも分かっている。

 スウェーデンのカロリンスカ研究所では、初期〜中期の204 人のアルツハイマー病患者を2グループに分け、1つのグループにはオメガ3脂肪酸のサプリメントを、他のグループには含まない偽薬を 6 ヵ月間服用させた。すると、ごく軽いアルツハイマー病の患者に限り、サプリメントを常用すれば、認知機能の低下が少ないことが認められたのだ。

●毎日の食事で認知症を予防したい

 

 また別の研究で、オメガ3脂肪酸は血管のバリアを超えて脳に直接届く物質であることも分かっている。今後もアルツハイマー病の進行への効果について、さらなる解明が期待されているのだ。

 幸いなことに、私たち日本人は魚を食べる習慣があり、マグロやイワシなど脂が多めの魚を週に数回食べれば、理想的なDHAの摂取量に近づくと言われる。生食がベストだが、加熱するときはできるだけ脂を残したい。焼き魚はそのまま焼くより、小麦粉をふるなどして脂を閉じ込めるといいだろう。

 亜麻仁(アマニ)油や荏胡麻(エコマ)油は、日に小さじ1杯程度が良いと言われるが、これらに含まれるαリノレン酸は、とても熱に弱い。そのまま飲むか、ドレッシングなどで摂るのがお勧め。最初は癖を感じるが、慣れると病みつきになる人も多い。

 日々の食を楽しみながら脳のアンチエイジングができるなら、まさに一石二鳥?!

(文=編集部)

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