どうして日本で進まない受動喫煙対策
「タバコ大好き人間としては、全エリアで禁煙にすると言われたら、どうやって生きて行けばいいのか……という想いだ。できれば、(法案が)出てきてほしくない」
厚生労働省が受動喫煙防止策の強化法案提出を目論んでいた一昨年、自民党・国会対策委員長(当時)だった竹下亘衆院議員(72)が口にした見解だ。
その竹下氏が1月9日、食道がんのために入院することを公表した。入院期間は「早ければ数カ月」だという。竹下氏は1日約60本のタバコを吸うヘビースモーカーであり、「禁煙よりも分煙 目指せ分煙先進国」を謳う自民党たばこ議員連盟・幹事の一人でもある。
そんな竹下氏が食道がんを公表する2日前(1月7日)、京都大学や東京大学医科学研究所のチームが、新知見を発表した。
ヒトの食道の細胞を遺伝子解析した結果、食道がんの発症リスクが喫煙や飲酒によって高まる仕組みの詳細を解明し、喫煙歴や飲酒歴が長いほど、発がんに関わる遺伝子変化の起こる頻度が高まることが究明されたのだ。
愛煙家として知られる麻生太郎財務大臣は、昨年の衆院財務金融委員会でタバコを吸う人は減っているが、肺がんの患者は増えているという話題が持ち上がった際、「たばこってそんな(肺がんに)関係あんの? って色んな人に聞くんです」と疑問を投げかけた。麻生氏には是非、今回の新知見を勉強していただきたい。
石破茂は「<みんなやめちゃえ>は知恵のある人の言うことではない」
2020年の東京五輪・パラリンピックまで2年を切り、各方面から「世界最低レベル」と酷評されるわが国の喫煙/禁煙事情は、遅々として改善されていない。その原因の1つに、禁煙ではなく“分煙”を推奨する愛煙家議員の存在もあるといえるだろう。
たとえば、自民党たばこ議連会長・野田毅衆院議員は「嗜好品なのだから、愛煙家・嫌煙家双方の権利を守ることが大事」と主張し、全面禁煙に反対している。また、石破茂衆院議員も、昨年1月に開かれた「受動喫煙防止強化に対する緊急集会」で、「一番のポイントは、皆がそれぞれ持っている楽しみや価値観を、いかに他人に迷惑をかけることなく実現できるか。これが知恵の出しどころなのであって、<みんなやめちゃえ>というのは、そんなに知恵のある人のいうことではありません」と述べ、全面禁煙に反対した。
その他、一昨年2月に開かれた「自民党・厚生労働部会」では防止側の主張に対して、「保健体育の授業じゃないぞ!」「五輪のためなら東京だけでやれ!」といった野次が飛ばされた。前者には前掲の“新知見”を、後者には五輪の会場は千葉県などにもあり、東京都だけではないという“会場認識”を改めていただきたい。
しかし、こういった議員の主張などもあり、竹下議員が「出来れば、出てきてほしくない」と願った強化改正法案は、塩崎厚労大臣(当時)の孤軍奮闘も虚しく閣議決定は断念を余儀なくされ。