<軽いたばこ>でもがんの要因に(depositphotos.com)
国立がん研究センターが、受動喫煙による肺がんのリスク評価を従来の「ほぼ確実」から「確実」に引き上げたのは昨年8月のこと。
喫煙者自身のリスクについては、肺がん以外にも(胃がんや肝がん他)数多の関連性が確実視されてきたが、受動喫煙リスクが「確実」と判定されたのは初めて。
同センターの片野田耕太がん登録統計室長は、時代の節目とばかりにこうコメントした。
「受動喫煙の影響を調べる段階は終わり、対策をとるべき段階になった」
その言葉を拝借して言い換えるならば、今回のコペルニクス的な話題はこうなるだろうか――「軽い」の好印象が通用する時代は終わり、「通気孔」のリスクを疑う段階になった。
英国のがん専門学術誌『Journal of the National Cancer Institute』(5月22日付)に掲載された最新知見は、受動喫煙の被害層よりも愛煙家本人や分煙(案)支持層をより震撼させたに違いない。
愛煙家仰天の「落とし穴」
論文を寄せたのは、米オハイオ州立大学総合がんセンターのPeter Shields副長ら研究陣。
彼らの報告の主役は、俗に「軽い煙草」と呼ばれ、売る側も「タール量が少ない」点を訴求して、今日の趨勢を占めている「ライト」で「マイルド」な一群である。
現在は「マイルド〇〇〇」や「△△△ライト」的な商品名も消え失せ、その手の形容的表示もパッケージから完全撤退した。
だが、「なんとなく安全そう」な「フィルター神話」だけは愛煙/嫌煙派を問わず、それこそ残り香の如く印象されているのではなかろうか。
ところが、Shields氏らの新たな知見はこう結論付けていた。
フィルターの穴から空気を吸い込み、それが煙を薄める効果をうむとされてきた「軽い煙草」だが……むしろ、ここ数十年間で増加が著しい「肺腺がんの要因」と疑われ、「重い煙草」よりも「良い」という評価は正しくない。
20世紀後半からの50年間というスパンで俯瞰した場合、世界的な喫煙者の減少に伴い、4つに分類される肺がんのうち3種類の発症率も減ってきている。
しかし、唯一例外なのが、最も一般的な種類とされる「肺腺がん」であり、多くの場合が肺の奥のほうで発症するのを特徴している。先日、肺腺がん治療のため歌舞伎俳優の中村獅童さん(44)が休養を宣言した。