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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第30回 】

100錠以上の向精神薬、催眠薬を服用後に寒冷下で昏睡状態、まさに生死をさまよった40代の男性

大量の睡眠薬での自殺企図の行き着くところは?(depositphotos.com)

 数年前の真冬に北海道で体験した出来事。

 生活保護を受けていた40代男性は独居中で、2年前より統合失調症の治療のため精神科外来で向精神薬と催眠薬などの薬物を処方されていた。

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 ある寒い夜に自殺企図して、これらの薬(フェノバルビタールやハルシオンなどの催眠薬、テルネリンなどの向精神薬)を、貯金ならぬ貯薬して、合計100錠以上服用した。その後、暖房設備のない台所で5日間、絶飲食状態で寝込んでしまった。

緊急入院で人工透析、27日間入院

 知人がこの男性宅に電話したが、応答がなかったため、不審に思って、家主に連絡して、呼びかけに応答しない男性が発見された。付近には服用薬の空包が多数散乱していたという。

 救急車で病院に搬入されたときの血圧は82/48 mmHg、体温は34.2℃とそれぞれ低下しており、光に対する反応も鈍かった。採血結果では、横紋筋融解症、急性腎不全で高い値を示すCPKが4,710 IU/L(正常値は300以下)、ミオグロビンが7,000 ng/mL(正常値は200以下)、尿素窒素は167.7 mg/dL(正常値は20以下)、クレアチニンが15.3 mg/dL(正常値は1.0 mg/dL以下)と著明に増加していた。

 また血液ガス検査では、体内はかなりの酸性に陥っていたことも判明した。搬送時の患者さんの状態は、横紋筋融解症によって誘発された急性腎不全であった。

 横紋筋融解症とは筋肉の細胞が溶けて壊死が起こり、筋肉成分のCPKやミオグロビンが血液中に流れ出てしまう病気で、特にミオグロビンが腎臓に取り込まれて、尿が出にくくなって、急性腎不全に進展してしまう。症状としては、手足のしびれ感、全身がだるくなり、歩行不能となることもある。また尿の色がワインのような赤褐色に変色する。

 1日尿量は僅か100mLと減少していた。直ちに血液透析を開始したが、腎臓の機能はなかなか回復せず、連日5日間、その後隔日で3回継続施行した。腎臓の機能が完全に回復するのに実に24日を要している。この患者さんは27日間入院して、精神科へ転科となった。

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