意外と知らない一酸化炭素の怖さshutterstock.com
毎年、冬場に増加する「一酸化炭素中毒」の被害。密閉度の高い部屋でガスや石油暖房器具を使う場合には、十分な注意が必要だ。
一酸化炭素は、炭火、練炭、燃料用ガス、石油などの不完全燃焼で発生する"猛毒"の気体。無色・無臭・無刺激のため、たとえ部屋中に充満していても、気がつかないことが多い。
[an error occurred while processing this directive]もっとも一酸化炭素中毒が起きやすいのは、閉め切った室内で炭や石油、ガスによる調理器具や暖房器具を使用した場合だ。中毒症状に気がついたときには、すでに運動神経が麻痺して手足の自由が奪われてしまい、逃げられなくなっている場合もあるという。
ちなみに、タバコの煙にも一酸化炭素が含まれている。喫煙すると頭がくらくらするのは、血液中のヘモグロビンと一酸化炭素が結合してできる一酸化炭素ヘモグロビンによって、酸欠状態に陥るためだ。タバコの煙に含まれる一酸化炭素は 4~6万ppmの濃度で、これは車の排気ガス中の6~8万ppmにも匹敵するほどの濃度。また、一酸化炭素ヘモグロビンの半減期は約3-4時間のため、喫煙者は常時酸欠状態にいることになる。
●「ついうっかり」が取り返しのつかない事態を招くことに
ご存知の通り、私たちの体は常に酸素を必要としている。呼吸によって取り込んだ酸素は、血液中のヘモグロビンと結びつき、体の隅々まで運ばれていく。しかし、一酸化炭素は酸素の何百倍もヘモグロビンと結びつく力が強いため、吸い込んでしまうと酸素の運搬作用を阻害し、酸素欠乏状態になってしまう。これが一酸化炭素中毒のメカニズムだ。
軽い中毒であれば、頭がフラフラする、顔がほてるなど、風邪に似た症状があらわれる程度だが、ひどくなると頭痛やめまい・吐き気などに襲われ、重い中毒に陥った場合には意識の消失、けいれん、窒息などを起こす。
空気中の一酸化炭素の濃度や、一酸化炭素にさらされた時間によって症状は違ってくるが、高濃度の場合は、数分で窒息から死に至ることもあるという。
空気中の一酸化炭素濃度が0.04%の場合、1~2時間の吸入で頭痛や吐き気が起こるとされるが、0.04%とは約5立方メートルの部屋(標準的な浴室の大きさ)に、2リットルのペットボトル1本分を混ぜたくらいの量。たったそれだけでも中毒症状が表れるほど、一酸化炭素は強い毒性を持った気体なのである。
一酸化炭素中毒を予防するには、とにもかくにも閉鎖された空間で、ものが燃えるような状況を作らないことと、ものが燃える空間では、こまめに換気を行うこと。
また、迅速な処置と二次被害の予防のためにも、具合が悪くなった人がいたときには、どのような状況下だったかを医師に正確に伝えることも重要だ。中にはガスの不完全燃焼による一酸化炭素中毒で倒れた高齢者を助けに入り、一緒に一酸化炭素中毒になってしまったようなケースもある。
日ごろから「換気に注意」などという言葉は耳にしていても、自分が危ない目に遭うまではなかなか危機感を抱けないもの。しかし「ついうっかり」が、あっという間に取り返しのつかないことになるのが一酸化炭素中毒の恐ろしさだ。これからは、「ものが燃えるところに一酸化炭素あり」を、肝に銘じておきたい。
(文=編集部)