土用の丑の日を前にウナギ価格が高騰!近大の「ウナギ味の養殖ナマズ」が救世主に

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うわさの養殖なまず君 近畿大学HPより

 7月30日(土)の「土用の丑の日」を前に、スーパー、百貨店、小売店のウナギ商戦が熱い。

 2012年に高騰して以来、高値が続くニホンウナギ。高値の元凶は、昨冬の稚魚(シラスウナギ)の不漁だ。しかも今年は、稚魚が餌を食べず成長が遅れたため、販売価格が高止まりした。スーパー、百貨店、小売店は、販売価格を昨夏より約1割上乗せしている。汗をかきかき、高値のウナギを横目で睨む炎夏になりそうだ。

 農林水産省によれば、ニホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定されているため、漁獲量が年を追って減少。総供給量は、2000年の約16万トンから2014年の約4万トンまで激減している。今後も漁獲量の逓減が続けば、ウナギのぼりの高値は避けられない。

ナマズ、ハモ、豚肉などさまざまな「ウナギもどき」が!

 このような品薄の煽りを受けまいと、全国のスーパーや小売店も窮余の策をあれこれと繰り出している。定番のウナギの蒲焼きだけでなく、ナマズ、ハモ、豚肉などを使った蒲焼きの売り込みに必死だ。だが、「ウナギもどき」に消費者の財布が緩むだろうか? 胃袋は満たされるだろうか? 土用の丑の日を前に、ヤキモキしながら模様眺めの人も多いかもしれない。

 毎日新聞(7月23日)によれば、大手スーパーのイオンの超目玉は「ナマズの蒲焼き」。先週の23〜24日に50店舗で数量限定販売したところ、まずまずの滑り出し。30日には121店舗で7000食の完売を目指すというその価格は、1食(半身1尾)で税別1480円と、同社のウナギの蒲焼きより約500円も安い。小売店でナマズの蒲焼きを販売するのは初の試みだ。

 西武池袋本店は「土用の丑の日は蒲焼きの日」を合言葉に、ウナギのほか瀬戸内産ハモの蒲焼き(税込み1620円)、豚肉の蒲焼き(税込み378円)など120種類もの蒲焼きをラインアップ、新たな蒲焼きニーズの掘り起こしに躍起だ。

近畿大学が手がける「ウナギ味のナマズの蒲焼き」

 悠々30年の歳月と巨費を投入し、魚の養殖技術の頂点と言われる「マグロの完全養殖」に成功した近畿大学。今や「近大マグロ」は、世界ブランドに急成長している。完全養殖の頂点に立った近畿大学の次なるターゲットは、6年前から取り組む「ウナギ味のナマズ」だ。

 開発に心血を注ぐのは、近畿大学農学部水産学科の有路昌彦教授。「ニホンウナギは稚魚の乱獲や河川の開発で激減している。国を挙げて保護しなければならない。高値のウナギにはちょっと手が出せない。だが、ウナギと比べて、風味も食感も香りも価格もまったく遜色がないナマズなら、日本人の自尊心と舌を満たせるはず。ナマズは小骨も中性脂肪も少なく健康的。ナマズの頭から取れる美味いダシを活かして蒲焼きのタレも作った」とマスコミのインタビューに胸を張っている。

 ちなみに現在、行われているウナギの養殖は、冬から春にかけて捕獲した天然の稚魚(体長5cm/0.2g)を養殖場で育てるので、完全養殖ではない。稚魚を6〜18カ月間もかけて養殖し、1尾200〜300gの成魚に育てる。したがって、稚魚の漁獲量が減れば、市場に十分な量を供給できないため、そのまま高値に跳ね返る。

 ただ、完全養殖へのチャレンジは続けられてきた。2010年4月、独立行政法人水産総合研究センターは、1000リットルもの大型水槽を使い、世界初のニホンウナギの孵化と完全養殖の実験に成功した。完全養殖とは、受精卵を人工的に孵化させ、仔魚(しぎょ)から稚魚、成魚を育てながら、精子と卵子を人工授精し、再び受精卵を人工的に孵化させる循環型の人工飼育技術だ。天然の受精卵や仔魚に依存せずに持続的・計画的な養殖を行える。

 水産総合研究センターの研究は、天然資源に依存しないウナギの生産に道を拓くと期待されたが、完全養殖のウナギは流通していない。受精卵から成魚を育てる完全養殖は、前例のない未知の世界なので、解決すべき課題が多く、実用化には時間がかかるためだ。

 たとえば、仔魚は水槽内に発生する細菌に弱いため、水槽は毎日交換しなければならない。餌を水槽の底に置くなど、仔魚の生態に合わせた独自の養殖技術が要求される。しかも、稚魚に育つまで半年から1年半も時間がかかる。つまり、大量の仔魚を育てる技術の確立や実用化の道は険しく、ウナギの完全養殖へのゴールは遠い。

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