コカ・コーラが「抗がん剤」の効果を高める!? 一方で「発がん性」を示唆する情報も

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コーラが抗がん剤治療に有効?shutterstock.com

 コカ・コーラが肺がん治療薬の吸収率を高めるのに有効だとする新たな研究が「Journal of Clinical Oncology」オンライン版に2月8日掲載された。それって本当?

コーラによって胃の内部を酸性に変える

 非小細胞肺がんの治療薬として使われるタルセバ(一般名:エルロチニブ)の吸収効果は、胃のpH値によって左右される。タルセバを使用する患者の多くはプロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる胸焼け防止薬を服用する必要があり、胃のpHが高くなる(アルカリ性寄りに傾く)ため、タルセバの吸収率は低下し、効果が低減してしまうという問題があった。ある研究では、PPIの使用によりタルセバの血中濃度が61%も低下することが明らかにされている。
 
 エラスムスMCがん研究所(オランダ、ロッテルダム)のRoelof van Leeuwen氏率いる研究グループは、酸性飲料であるコーラをタルセバと一緒に服用することにより、胃のpHを逆転させることができないかと考えた。
 
 コーラが選ばれたのは、オレンジジュース、セブンアップ、ドクターペッパーなどの他の飲料に比べて胃の酸性度を一時的に増大させる効果が強かったためだという。

 研究では、タルセバを服用する非小細胞肺がん患者28人を対象とし、薬剤とともに水250 mlを服用した場合と、同量のコカ・コーラ・クラシックを飲んだ場合とで比較した。その結果、コーラを摂取した場合には、PPIを併用した場合のタルセバの吸収率に臨床的にも統計的にも有意な上昇がみられたという。研究グループは、胃のpHに依存する他のがん治療薬に対してもこの戦略が有効である可能性があると述べている。

 米ノースウェル・ヘルス・プレインビュー病院(ニューヨーク州)のAlan Mensch 氏は、「タルセバを必要とする患者の多くは、胃炎や鎮痛薬による胃酸を減らすためにPPIを服用する必要がある。その対策としてコーラを利用することは興味深い」と述べている。
 
 ただし、今回の試験は被験者28例と小規模なものである。しかも、データでは、コーラを飲んだ場合、抗がん剤の血中濃度などが平均が39%上昇したとあるが、その範囲を見ると、最小でマイナス12%、最大で136%とAUCが低下したケースもあり、個人差が非常に大きい。
 
 酸性飲料の効用に注目した意義は大きいが、実際に治療に取り入れるには、コーラに含有される糖分や添加物等の影響も考慮していく必要があるだろう。

そもそもコーラは発がん性を示唆する情報も

 コーラに発がん性のある物質が含まれていることは、以前から指摘されている。
コーラのカラメル色素に含まれる4-メチルイミダゾール(4-MI)という物質は、動物実験で発がん性が示されている。日本では規制されていないが、カリフォルニア州では食品に表示しなくてよい安全量を、1日に29μg以下と厳しく定めている。

 2012年には、アメリカの市民団体「Center for Science in the Public Interest」(CSPI )が、各国で販売されるコーラにはカリフォルニア州の基準を超えるものが多くあることを指摘し、米国食品医薬品局(FDA)に禁止を要請した。

 ちなみに日本のコカコーラには、355mlあたり72μgの4-MIが含まれており、これはカリフォルニア州で販売されているコカコーラより約18倍も多い(ただし、FDAは、現在の含有量であれば安全であるとコメントしている)。

 4-MIだけではない。ダイエット系のコカ・コーラに含まれている人工甘味料のアスパルテーム(パルスイート)についても様々なリスクが指摘されており、ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院で11年間にわたって研究結果では、アスパルテームを使用したダイエット飲料と腎臓機能障害との関連が示唆されている。

 「コカコーラが抗がん剤治療に有効」という、この研究が臨床でそのまま活用される可能性は低いだろう。また、研究の規模が小さくその信憑性も疑わしい。なにより研究費をどこが出しているのかが非常に気にかかるところ。この手の研究では企業の意向を受けている場合が少なくない。どうしてコカ・コーラなのか? この点の説得力はやはり弱いのではないか。

 発がん性も指摘されている飲み物が抗がん剤治療に有効!? 何かの冗談だとしか思えない。
(文=編集部)

参考記事
○ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究(Natural Societyに掲載)
http://naturalsociety.com/aspartame-alert-diet-soda-destroys-kidney-function/

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