連載第10回 目に見えない食品添加物のすべて

口にする食品添加物をできるだけ少なくするための簡単な知恵とは!?

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食品添加物を少なくする買い物方法とは? 1000 Words shutterstock.com

 これまで食品添加物の裏事情について、いろいろな話をしてきた。講演会などでこんな話をすると、「もう食べられるものがない」「明日から何を食べたらいいのか」と不安を訴える人も少なくない。普段、何げなく食べている出来合いのお惣菜に何十種類もの添加物が使われているという事実に驚くのだ。しかし、そんな心配をする人ほど、実はこれまで加工食品に頼ってきたのかもしれない。
 では、どうしたら添加物を減らすことができるのだろう。

その1 加工度の高い食品はなるべく避ける
 たとえばビタミン、ミネラル、食物繊維がたっぷりとれる根菜料理の代表、五目煮。自分でむいた根菜類を自分でとっただし、砂糖や純米みりん、丸大豆しょうゆなどで煮込めば、添加物はゼロだ。
 
 これを少し手間をはぶいて、五目煮に必要な根菜類をまとめて洗って皮をむいた水煮パックを利用したとする。この水煮パックでは皮をむいた野菜を長持ちさせたり、変色を防ぐために10~20の添加物が入る。さらにもっと手軽にトレーや真空パックに入った調理済みの五目煮を使うと、合計30~50種類の添加物が加わることになる。
 当然ながら、加工度が高ければ高いほど、使われる添加物は多くなるのだ。
 
その2 安いものにとびつかない
 買い物をするときに、値段だけを見て安いもの、特売のものだけを買っていないだろうか。ほかの食品と比べて値段の安いものには必ず理由がある。

 スーパーのPB(プライベートブランド)は大手食品のナショナルブランドに対して安い値段で売っている。これらの中には材料の質を落として、添加物を使って単価を下げているケースが少なくない。ためしに、食品の裏のラベルを見れば、普通の家庭の台所にない「添加物」が数多く使われていることがわかる。昨日まで398円だったソーセージを298円で売りたいと言われれば、添加物を使って利益は変わらず298円のものを作る。それがプロの仕事だ。
「安いものには理由がある」これを肝に銘じておいてほしい。

その3 薄味に慣れて素材の味を知る
 「塩」「化学調味料」「たんぱく加水分解質」。黄金トリオとよばれる加工食品のうまみベースだ。だしの素もこの3つから成り立っているという話は以前にもしたが、これらのうまみは添加物とエキスで作られる濃くて不自然な味である。これらの味に慣れてしまうと、天然のだしの味など物足りなくなり、食物の素材そのものの持つ本来の味なども感じられなくなってしまう。いわゆる味覚の破壊だ。不自然なまでの濃い味でなければ「おいしい」と感じなくなり、「塩分」「油分」「糖分」の摂りすぎ3兄弟のワナにはまる。
 料理はできるだけ、天然のものを使い、薄味を心がけたい。

 ここまで書くと「手作りなんて面倒くさい」という声が聞こえてきそうだ。しかし、考えてみてほしい。めんつゆ、鍋の素、ドレッシング、焼き肉のタレ......。こんな商品が冷蔵庫のドアポケットにたくさん並んでいないだろうか。これらは大変便利な存在だが、添加物もたくさん使用されている。しかも、値段も決して安くない。食事に必要な分だけ、ほんの少し手作りをすれば、食費も安くあがり、添加物を最小限度に抑えることができる。
 そもそも「合わせ調味料」などはそんなに必要なものなのだろうか。
 
 もちろん、加工食品や添加物をいっさい食べてはいけないと言っているわけではない。食品添加物にはそれなりのメリットもある。しかも、現代社会で加工食品をいっさい食べないという生活は不可能に近い。時にはコンビニのお弁当や加工食品の日が続いたりすることがあるかもしれない。それでも、自分が何を食べているか「知っておく」ことは大切であり、そこから必ず「手作りの」反動がくるのではないかと思う。

 添加物を単純に目の敵にして拒否するのではなく、どう付き合うか、どう向かい合うか、どこまで自分は許せるか。それこそ大切なことだろう。

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安部司(あべ・つかさ)

食品添加物評論家。1951年、福岡県生まれ。総合商社食品課に勤務後、無添加食品の開発・推進、伝統食品や有機農産物の販売促進などに携わり、現在に至る。熊本県有機農業研究会JAS判定員。経済産業省水質第1種公害防止管理者。工業所有権 食品製造特許4件取得。食品添加物の現状、食生活の危機を訴え続けている。主な著書にベストセラーとなった『食品の裏側』(東洋経済新報社)、『なにを食べたらいいの?』(新潮社)、『「安心な食品」の見分け方 どっちがいいか、徹底ガイド』(祥伝社)などがある。

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