英語より役立つ"フェロモン"コミュニケーション?

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猫も"フェロモン"コミュニケーションでカップルに?

 海外で活躍するには英語! 世界中の人とコミュニケーションをとって行動するには、先進国での使用人口が多い英語は必須だそうである。

 『旧約聖書』によれば、その昔、全ての人間は同じ言葉を話していた。あるとき、天にも届く塔を建設し始めた人間に対し、神が怒って人々が話す言語を別々にした。コミュニケーションがとれなくなった人間は世界各地に散り、未完となった幻の塔は「バベルの塔」と呼ばれる――。

 この時の仕打ちがなければ、日本人が英語で苦しむことはなかったかもしれない......。

人間は退化してフェロモンを受け取れない?

 言葉を話すのは、万物の霊長なるヒトの特長だとされる。だが、他の生き物も立派にコミュニケーションをとって生活している。言葉がなくても、オスとメスは子孫を残し、アリやハチのように分業化された高度な社会を運営し、立派な巣を建設する生物もいる。

 それは、フェロモンによってコミュニケーション可能だからだ。

 たとえば、カイコガのメスは体から「性フェロモン」を発信する。「魅力的なカイコのメスがここにいるわよ」というメッセージだ。すると、それを受け取ったオスはメスに急行する。

 「集合フェロモン」もある。「全員、集合!」というメッセージだ。ほかにも、アリやハチ、魚類でよく使われる「警戒フェロモン」、仲間に道筋を教える「道しるべフェロモン」などがある。

 このようなフェロモンを感じるのは嗅覚器。フェロモンとは一種のニオイだと捉えるとわかりやすい。言葉の代わりにニオイで情報をやりとりするのが、生物では一般的なのだ。

 動物の嗅覚には、「鋤鼻(じょび)嗅覚系」と「主嗅覚系」があり、フェロモンを受け取るのは鋤鼻嗅覚系だ。しかし、人間はこれが退化しているので、フェロモンを受け取ることはできないというのが、これまでの科学的な見解だった。

鋤鼻嗅覚系がなくてもフェロモンを受け取れるかも!?

 

 しかし、私たちは理屈では説明できない行動をとることがある。ひとめ惚れなどは、まさにそうだ。

 ある調査によると、カップルの多くは、無意識に自分の遺伝子の型と違うタイプの相手を選んでいるという。これは、免疫力が高く抵抗力の強い子どもを残すための合理的な選択なのだが、遺伝子の型は汗のニオイでわかるというのだ。

 さまざまな男性が着たシャツのニオイを未婚女性に嗅いでもらう実験では、自分の遺伝子の型と離れたニオイを好むことがわかっている。一方男性は、花のニオイに惹かれることが多いという。

 こうしたことから、じつはヒトも無意識下でフェロモンの影響を受けているのではないか、という疑問がいつもくすぶっていた......。

 2015年、大阪バイオサイエンス研究所の小早川令子・第3研究部長らは、異性をひき付けるなどの行動に関係するフェロモンが人にもある可能性があることを、『米科学アカデミー紀要(電子版)』で報告した。

 研究では、マウスの主嗅覚系の機能を働かないようにしたら、フェロモンを介した行動の一部が見られなくなったという。主嗅覚系でもフェロモンを感じていたのだ。これは、鋤鼻嗅覚系が退化したヒトでも、主嗅覚系でフェロモンを受け取っている可能性があることを意味する。

 新たな香料の開発に役立つ発見だ。我々は無意識にニオイで人の印象を左右しているのかもしれない。"フェロモン"コミュニケーション力こそ、英語より影響のある能力かもしれない。
(文=編集部)

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