「膵臓がん」は坂東三津五郎さんの命を奪った「がんの王様」! 安倍総理の父やジョブズも......

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体の深部に位置する重要臓器の膵臓

 2月21日、坂東三津五郎さんが膵臓がんのため亡くなった。享年59歳、還暦を前にした早すぎる死だった。

 坂東さんは、2013年7月に膵臓の異常が見つかり、9月に膵臓がんの摘出手術を受けた。翌年4月に一度は舞台復帰を果たしたが、9月の定期検査で肺の異常が発覚し、10月には肺にがんが転移。2015年1月末にインフルエンザに感染し、肺炎を併発して緊急入院した直後のことだった。

 9代目坂東三津五郎の長男で、1962年に5代目坂東八十助を名乗り初舞台。日本舞踊坂東流の家元で踊りの名手としても知られた。歌舞伎界だけでなく、テレビCMにも出演し、現代劇やテレビ、映画でも活躍。2014年には、人気ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』にも病気療養後初めてレギュラー出演していた。

 膵臓がんによって、2009年に小説家・評論家の栗本薫さん(享年56歳)、1991年には安倍晋三総理の父、元衆議院議員の安倍晋太郎さん(享年67歳)が亡くなっている。アップルの創業者、スティーブ・ジョブズさんが膵臓がんの発見・処置が遅れ、2011年に56歳で帰らぬ人となったのは記憶に新しい。

 各種類のがんで診断法が進歩し、早期発見・早期治療によって、がんに罹っても元気に日常生活を送っている人が増えている。しかし、膵臓がんは、いまだに有効な早期発見法がなく、診断されたときには多くの人がすでに進行しているため治療成績が悪く、「がんの王様」といわれているほどだ。

自覚症状はなく病院で見つかるときには進行がんに

 厚生労働省の人口動態統計によれば、膵臓がんによる死亡者数は年々増加している。2012年の膵臓がん死亡者数は年間2万9916人で、20年前(1992年・1万4147人)と比べて2.1倍、 10年前(2002年・2万137人)と比べて1.5倍と急増している。膵臓がんはがんによる死因の8.2%を占め、肺、胃、大腸、肝臓に次ぐ第5位で、決して稀な病気ではない。

 国際的に見ても、年齢調整死亡率で比較すると、以前は日本の膵臓がんの死亡率は低いレベルだったが、1960年代から80年代後半まで増加し、欧米諸国並みになった後、緩やかに増加している。

 膵臓は、食物の消化を助ける膵液の産生と、インスリンやグルカゴンなど血糖値の調節に必要なホルモンの産生を行う重要な臓器だ。ところが、膵臓は胃の裏側にあるため、内視鏡は届かず、超音波でも一部しか映らない。体の深部に位置し、胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆のう・脾臓などに囲まれているため、がんがあっても見つけることが非常に難しい。病院で見つかる膵臓がんのほとんどが、ステージIII以上の進行がんだ。

 また、早期の膵臓がんに特徴的な症状はない。自覚症状もほとんどないため、病院を受診した理由で多いのは、胃のあたりや背中が重苦しい、何となくおなかの調子がよくない、食欲がないなどという漠然としたものだ。

 国立がん研究センター中央病院の臓器別がんの5年生存率の年次推移を見ると、長期的にはほとんどのがんが改善傾向にある。ところが、膵臓がんだけは改善が見られず、全てのがんを合わせた5年生存率は60%ほどに達しているにもかかわらず、膵臓がんは10%程度と極端に低い。また、罹患数は死亡数とほぼ同じ、つまり、膵臓がんになって完治する人は極めて少ないのだ。

ようやく簡易な血液検査が実用化目前に

 2013年、膵臓がんを血液検査で早期のうちに見つける方法を国立がん研究センターなどが開発した。血液中の特定のタンパク質を調べ、早期でも9割以上の精度で発見できるという。

 人間ドックなどでは、膵臓がん患者で増える抗原を血液検査で調べる腫瘍マーカー検査が行われているが、がんがある程度大きくならないとわからない。研究チームが新しい検査法と既存の腫瘍マーカー2種類を併せて実施すると、精度は99%以上になったという。

 また、2014年には「第73回日本癌学会学術総会」で味の素と大阪府立成人病センターの共同研究チームが、血中アミノ酸濃度バランスを調べることで膵臓がんの早期発見ができる技術を開発したと発表した。

 膵臓がんの治癒のためには早期発見がとても重要だ。そのため早期発見方法の研究が意欲的に続けられている。ようやく簡易な血液検査が実用化目前まできており、近い将来の検診での活用が期待されている。
(文=編集部)

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