正面衝突事故で最も多く生き残るのは「大型車」に乗る「若い男性」!

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若者への啓発で高齢者の事故死が減少? RewSite/PIXTA(ピクスタ)

 事故による死亡の中でも、最も多くの割合を占めるのが交通事故。わが国の交通事故死者は1970(昭和45)年の1万6,765人をピークに急速に減少し、2013(平成25)年は4,373人となった(警視庁交通局による)。

 早くからモータリゼーションが進んできたアメリカでは、事故死者数は90年代以降、長く横ばい状態だった。2006年から減少傾向は強まったが、それでもまだ年間3万人以上が交通事故で死亡している。人口10万人当たりの死亡者数で比較しても、わが国が4,5人なのに対して11,0人(2009年)。欧米諸国の中でも死亡率が高い。

 そのような状況を背景に、最近アメリカで面白いデータが発表された。自動車の正面衝突事故では「大型車を運転していること」と、「若い男性であること」が、生存する可能性を高めることが分かったという。インディアナ大学公衆衛生学部の、Uzay Kirbiyik氏らの研究によるものだ。

SUVは乗用車の9倍も生存率が高い

 同グループは、1,100件を超える自動車同士の正面衝突事故を分析。すると、ほかの年齢群よりも15~24歳の人の事故件数が多いことが判明した。ただ、その15~24歳の人は正面衝突事故の21%に関与していたものの、死亡率は39%と、全年齢群のうち最も低かったという。

 もうひとつの重要な因子は「車の大きさ」だ。普通乗用車に乗った人が正面衝突で死亡する可能性は小型トラックの17倍、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)車の9倍だった。そのほかの因子としては、年式が新しい車であること、シートベルトを着用していること、衝突時のエアバッグが作動していることなどがあると、正面衝突で生存する可能性が高まったという。

 なお、今回の分析では男性よりも女性のほうが正面衝突で死亡する可能性が高いことも判明したが、この違いがどうして起きるのかについては、この研究では検討されていない。 

若者への啓蒙で事故死を減らせる可能性

 交通事故の疫学的な分析は意外に少なく、今回のような明確なデータで示されるのは意義深い。たとえば、正面衝突を起こす若い男性の死亡率が低いのは、ほかの属性の人が犠牲になっていることでもある。

 Kirbiyik氏も、「何らかの取り組みで若いドライバーの起こす事故を減らすことができたら、ほかの年齢群の死亡率を低減できる可能性がある。意外ではないが、簡単なことではない」と述べている。

「車の大きさ」という要因についても、とりわけ大型車が好まれるアメリカと、小型車の多い国とではデータが変わってくるかもしれない。各国の事情を考慮した調査研究が行われることを願いたい。

 ちなみにアメリカはシートベルト着用に関する法制化が比較的遅く、EU諸国などに比べると着用率が低い時期が続いていた。しかし2012年には、運転者や乗客のシートベルトの着用率が86%と、過去最高の水準を記録。さらに着用率が1%高まれば、年間270人の命が救われると推定されている。

 今回のような詳細な分析が、万人に分かりやすい提言となって浸透すれば、交通事故の犠牲になる人はもっと減っていくだろう。日本でも、詳細な分析を期待したい。
(文=編集部)

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