がんに低侵襲の新しい治療方法 国内最大規模のIVRセンターがオープン

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「IVR」----このアルファベット3字の略語に医学界の注目が集まっている。正確な英単語は「InterVentional Radiology
:インターベンショナル・ラジオロジー」。日本では「放射線診断技術の治験的応用」と訳されたり、[血管内治療]や[血管内手術]「画像下治療」とも呼ばれるようだが、素人には理解不能だろう。

だが、IVRは現在、心臓病やがんといった難病に対して極めて有効であることが明らかになりつつある。遠くない将来、我々が当たり前のように「IVR」と発音していても全くおかしくないのだ。

 12月10日、国立がん研究センター(東京都中央区)は記者会見を開き、IVRセンターの開設を発表した。堀田知光理事長は「この新しい技術が普及していくようにしたい」と抱負を語り、IVRセンター長に就任した荒井保明放射線科長は「ガンに特化した施設としては日本最大規模で、類似の施設は少ないはず」と説明を行った。

 このIVRは、80年代にアメリカなどで開発された治療法だ。これは①CT(コンピューター断層撮影)スキャンや、MRI(磁気共鳴画像装置)で体の中を透かして見るようにして、②医師がリアルタイムでチェックしながら針などの医療機具を皮膚から刺したり、血管に通したりすることで、③患部の治療を行う----というもの。

 何より重要なのがメスなどで体を開かないことだ。そのため全身麻酔ではなく局所麻酔で済むことが増える。患者のダメージが減少し、手術痕も小さくなり、何より手術のリスクを大幅に少なくすることができるという「夢の新技術」なのだ。

 開腹を行わない手術としては2006年、当時ソフトバンクの監督を務めていた王貞治氏が胃がんの摘出を行った「腹腔鏡下手術」をご記憶の方もおられるかもしれない。IVRも類似の手術ではある。だが腹腔鏡下手術は先端に装着されたカメラの画像が患部を映すため、視野は相当に限定されている。対してIVRはCTスキャンやMRIを使って体を「透けさせる」ため、医師が目視する範囲は相当に広い。

IVRをがん治療の第四の治療法に

 IVRは特に循環器の分野では相当な実績を上げているという。患者の体の中を見ることができるため、血管などに細い管(カテーテル)を通すことが比較的、容易になる。狭くなった血管をバルーン(風船)やステント(網目状の金属筒)を使って拡げたり、交通事故などで破れた血管を塞いで止血したりする手術が行われている。

 だが、荒井センター長は「実はIVRはがんの治療にも応用できることが次第に明らかになっており、これを更に広めていく必要がある」と指摘する。

 例えば腎臓がんだが、これまでなら一部にしかがん細胞に冒されていなくとも、場合によっては全摘出を行うしかないケースもあった。だがIVRを使えば細い管を到達させ、がん細胞に対して急速冷凍と解凍を繰り返して死滅させる「凍結療法」が行える。健康な腎臓をできる限り温存することが可能になったのだ。

 また、がんといえば「痛い」というイメージを持つ人も多いに違いない。疼痛緩和は進歩しているとはいえ、例えばがんが骨に転移するとかなり厄介なことになる。腫瘍によって骨が破壊され、強烈な痛みの原因となる。

 対処法としては麻薬性の鎮痛剤が一般的だが、量が多いと一日中、眠気に支配され、ベッドの上で寝たきりとなってしまう。しかも寝返りを打つと疼痛が復活する。患者の精神的な落ち込みは相当なもので、うつ状態になってしまう場合もある。

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