がんと上手に付き合っていくことが治療を考える上で大事
情報社会となった現代ですが、残念ながら、患者さんが得ることができるがんの情報には間違ったものが多い現状があります。それは、がんという病気がまだまだ治らない病気であると同時に、それを治すための治療法、少しでも良くする治療は、患者さんにとっては、つらいものであり、限界があるからです。かと言って、正しくない間違った情報に惑わされ、あるいは騙されて、逆につらい目に会ってほしくはないと思います。
ちまたには、耳障りはよいのですが、がんの間違った情報があふれています。「がんは放置せよ」「抗がん剤は効かない」「がんを食事で治す」「体にやさしい免疫治療で治す」「がんを治す奇跡のサプリメント」などなどです。こうした治療は、耳にやさしく、最初はとっつきやすいのですが、がんが進行してきた場合、冷たく見放されることも多いのです。
がんと正面から向き合っていくことは、大変なことと思います。時には逃げ出したくなるものです。がんは、まだまだ治らない病気ではありますが、うまく付き合っていく、共存ができる時代になってきています。がんと上手に付き合っていくことが、これからのがん治療を考える上で大事なことと思います。
この「がんと上手に付き合っていく方法」についても、これから解説していきたいと思います。がん患者さん、国民の皆さんにとっても、がんという病気から決して逃げることなく、がんと向き合い、上手に付き合っていく方策を見い出していってほしいと思います。
勝俣 範之
勝俣範之(かつまたのりゆき)
日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授
がん薬物療法専門医
1963年山梨県生まれ。1988年富山医科薬科大学医学部卒業
2011年10月より、20年間務めた国立がん研究センター中央病院を退職し、日本医科大学武蔵小杉病院で腫瘍内科を立ち上げた。日本でまだ少ないがん薬物療法専門医・腫瘍内科医の一人。がんサバイバー支援にも積極的に取り組んでいて、正しいがん情報の普及を目指して、ブログ、ツイッター、フェイスブックを通し、情報発信している。近著に『「抗がん剤は効かない」の罪』(毎日新聞社刊)がある。
連載「「抗がん剤は効かない」をなぜ信じてしまうのか?」バックナンバー